AI概要
【事案の概要】 本件は、ボイスドラマ(音声作品)の制作に関与した原告が、被告ら(シナリオ作成者である被告Aとその夫である被告B)に対し、3つの請求を行った事案である。原告は「C」という名前で本件各作品(計11作品)の音声編集や効果音の収録等を担当していた。 第1に、原告は本件各作品が原告と被告らの共同著作物であり、持分2分の1の共有著作権を有するとして、被告らが売上金928万円を全額取得したことにつき、不当利得返還請求及び不法行為に基づく損害賠償請求として464万円の支払を求めた。第2に、原告と被告らとの間で編集作業等の対価を支払う内容の共同著作物制作契約を締結したとして、985万円の支払を求めた。第3に、被告らの不払により精神的苦痛を被り、ホームヘルパー等の利用を余儀なくされたとして、50万円の損害賠償を求めた。請求額は合計1499万円である。 本件各作品は2017年頃から制作され、インターネット上でダウンロード販売された。制作過程は、被告Aがシナリオ・台本を作成し、声優を選定して台詞を収録させ、効果音の収録・編集作業を経て、被告Aが完成の判断を行うというものであった。原告は、被告Aからの依頼を受けて声優候補者の紹介、演技方法の助言、効果音の収録、不要音声の削除等の編集作業を担当した。 【争点】 主な争点は、①原告が本件各作品の共同著作者に当たるか否か、②被告らの利得又は原告の損害の有無及び額、③本件制作契約の成否及びその内容(特に報酬額の合意内容)、④利得又は報酬の不払いと相当因果関係を有する損害の有無及び額の4点である。 【判旨】 裁判所は原告の請求をいずれも棄却した。 争点①について、共同著作者に当たるためには著作物の制作に際し「創作と評価されるに足りる程度の精神的活動」が必要であるとした上で、原告の関与は、被告Aが制作したシナリオや指示に沿う形での効果音の収録や編集作業の担当にとどまっていると認定した。原告が主張する声優の紹介も候補者を紹介したにとどまり、演技方法の助言もアドバイスにとどまるものであり、効果音の選択・収録や編集作業も被告Aのシナリオ・指示に沿いチェックを受けて行ったものであるから、原告の創作的な精神活動を具体的に基礎付けるものとはいえないと判断した。 争点③について、被告Aと原告との間に編集作業等の報酬を支払う契約が成立していたことは認めたが、具体的な報酬額は予め定められておらず、相当額を報酬とする合意にとどまると認定した。その上で、原告が主張する985万円の相当性を裏付ける証拠は不十分であり、被告Aから現に支払われた額(原則1本1万円)が対価の相場から乖離したものではなかったと推認されるとして、未払報酬の存在を否定した。支払時に原告が異議を述べなかった点も考慮された。 以上により、原告は共同著作者とは認められず、制作契約に基づく未払報酬も存在しないことから、不当利得返還請求、不法行為に基づく損害賠償請求、契約に基づく支払請求及び精神的損害に関する請求はいずれも認められないとした。