AI概要
【事案の概要】 学校法人A(大学及び高等学校を運営)の理事長であった被告人が、不動産関連会社の代表取締役ら6名と共謀し、同法人所有の高校敷地約7,287平方メートルを売却して得た手付金21億円を横領した業務上横領の事案である。 被告人は、かねてより学校法人の経営権取得を目指していたが、買収資金がなかったため、被害法人の敷地の資産価値に着目し、「金主から借り入れた買収資金で経営権を取得した後、敷地を売却して得た手付金で借入金を返済する」という枠組みを立案した。平成27年12月以降、共犯者らに金主探しを依頼し、共犯者Kから18億円の貸付けを受けて平成28年4月に被害法人の経営権を実質的に取得し、平成29年6月には理事長に就任した。同年7月、被害法人の土地を共犯者Kの会社に売却し、手付金21億円を複数の会社を経由させてKへの借入金返済等に充てた。 【判旨(量刑)】 裁判所は、以下の事情を総合考慮し、求刑懲役7年に対して懲役5年6月を言い渡した。 重い方向の事情として、(1)被害金額21億円は業務上横領の事案において最も高額な部類に属すること、(2)高校敷地という学校経営上重要な財産が売却された上、売却代金の約3分の2が横領され、経営難の被害法人をさらに困難な状態に陥らせかねなかったこと、(3)犯行は被告人が1年半以上前から枠組みを立案し、虚偽の残高証明書で旧経営陣を欺いて経営権を取得するなど計画的で悪質であること、(4)手付金の交付先について新校舎建築費用の確保などともっともらしい理由をつけ、複数の会社を経由させて発覚を防ごうとするなど犯行態様が巧妙であること、(5)被告人は主犯として少なくとも10億円の利益を実質的に取得したこと、(6)学校法人経営への個人的欲求を満たすための犯行動機に酌量の余地がないことを指摘した。 軽い方向の事情として、(1)犯行後に被害法人の経営・教育改革に尽力し学生数増加等の成果を上げたこと、(2)犯行を認め捜査に協力していること、(3)借入金18億円のうち5億円は寄付金として被害法人のために使われたこと、(4)前科がないこと、(5)共犯者Kが21億円を支払い売買契約が合意解除されたことで財産的被害が事後的に回復されたことを考慮した。