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【事案の概要】 本件は、商標登録取消審判請求に対する不成立審決の取消訴訟である。被告(縣屋酒造株式会社)は、「安心院蔵」の文字から成る商標(指定商品:日本酒、洋酒、果実酒等)の商標権者である。原告(有限会社江本商店)は、商標法50条1項に基づき、不使用を理由として本件商標の取消しを求める審判を請求したが、特許庁は「審判の請求は成り立たない」との審決をした。 本件商標については、大分銘醸株式会社(原告・被告ら3社が共同設立した瓶詰会社)が、「安心院蔵」の商標を付した焼酎を製造・販売しており、要証期間内に宇佐市発行のカタログに使用商品を掲載していた。大分銘醸の代表者と被告代表者は夫婦関係にあり、両社は宇佐市安心院町内に近接して所在している。原告は、大分銘醸が被告から本件商標の通常使用権の許諾を受けた事実はなく、仮に許諾があったとしても利益相反行為として無効であると主張して、本件審決の取消しを求めた。 【争点】 1. 大分銘醸が被告から本件商標の通常使用権の黙示の許諾を受けていたか否か 2. 通常使用権の許諾が利益相反行為として無効か否か 3. 大分銘醸の代表者及び被告代表者の各陳述書の信用性 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却した。 第一に、通常使用権の黙示の許諾について、裁判所は、大分銘醸が「安心院蔵」の表示を付した焼酎を出荷・広告していたこと、被告がこれに異議を述べた事情がないこと、むしろ被告は大分銘醸から当該焼酎の納入を受けていたこと、両社の代表者が夫婦であること、両社が近接して所在していること等の客観的事実から、被告は大分銘醸に対し要証期間前から本件商標の使用を黙示的に許諾していたと推認されると判断した。陳述書はこの推認を補強するものにすぎず、陳述書のみに基づく認定ではないとした。 第二に、陳述書の信用性について、原告が指摘する記載の誤りは、通常使用権の許諾に係る部分の信用性を否定すべきほどの事情ではないとし、税理士が商標使用について説明を受けていなかったことも、無償の使用許諾であれば会計処理上の影響がないことから、許諾の事実に反するとはいえないとした。 第三に、利益相反行為の主張について、旧商法265条1項は会社の利益保護を目的とするものであるところ、大分銘醸自身は意思表示の無効を主張しておらず、むしろ代表者が許諾の存在を認める陳述書を作成していることから、第三者である原告が利益相反行為による無効を主張することはできないとして、最高裁判例を引用しつつ排斥した。