死体損壊,死体遺棄,殺人
判決データ
- 事件番号
- 令和2う447
- 事件名
- 死体損壊,死体遺棄,殺人
- 裁判所
- 大阪高等裁判所
- 裁判年月日
- 2021年1月26日
- 裁判種別・結果
- 破棄自判
- 裁判官
- 岩倉広修、浅見健次郎、澤田正彦
AI概要
【事案の概要】 被告人は、平成30年1月20日頃、滋賀県守山市内の自宅において、同居していた母親(当時58歳)を殺害し、その後、死体の頭部及び四肢をのこぎり等で切断し、体幹部を河川敷に投棄するなどして死体を損壊・遺棄した。被告人は幼少期から母親と二人暮らしで、母親は被告人の進路について、自宅から通学可能な国公立大学医学部医学科以外への進学を一切許さず、被告人が就職や他大学の受験を試みる度に探偵や警察を使って連れ戻すなど、異常ともいえる干渉・束縛を続けた。被告人は9年間の浪人生活を経て、助産師になることを条件にようやく医学部看護学科への進学を許されたが、助産師課程の選抜試験に不合格となり、手術室看護師を希望するも母親に一蹴され、激しく罵倒された。追い詰められた被告人は、母親を殺害しなければ解放されないと思い詰め、犯行に及んだ。原審(裁判員裁判)は被告人を懲役15年に処したが、被告人は原審では犯人性を否認し、控訴審に至って初めて殺害を自白した。弁護人は量刑不当を主張して控訴した。 【争点】 主な争点は、原判決の懲役15年という量刑の当否である。具体的には、(1)殺害態様が不明であるにもかかわらず、死体損壊・遺棄の態様のみから犯行全体を「残忍」と評価した原判決の犯情評価の当否、(2)犯行に至る経緯に同情の余地を認めつつも動機を「自己中心的」と評価した原判決の経緯・動機評価の当否、(3)控訴審で被告人が殺害態様を詳細に自白したことによる新たな事情の評価、が問題となった。 【判旨(量刑)】 大阪高裁は原判決を破棄し、懲役10年を言い渡した。まず犯行態様の評価について、併合罪の量刑においては各犯罪の行為責任に対する的確な評価が必要であるところ、原判決は法定刑に死刑・無期懲役を含む殺人罪の犯行態様を評価せず、法定刑が懲役3年以下の死体損壊・遺棄の態様のみから犯行全体を「残忍」と評価しており是認できないとした。次に経緯・動機について、被告人が母親の束縛から解放されるために殺害を選択したことに正当化の余地はないが、そのような動機を形成するに至った経緯と切り離して有責性を評価することはできず、被告人のために酌むべき事情があるとした。さらに控訴審で信用できる自白がなされた結果、殺害態様は自作の凶器で就寝中の母親の左頸部を複数回突き刺したものであり、殺人行為として特に残忍とは評価できないこと、反省の深化や実父との関係改善等も考慮し、原判決の懲役15年は重きに過ぎて正義に反するとして、懲役10年が相当と判断した。