課徴金納付命令処分取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、画像処理技術の研究開発等を目的とする株式会社モルフォの取締役であった原告が、インサイダー取引規制に違反したとして金融庁長官から課徴金133万円の納付命令を受けたことに対し、その取消しを求めた行政訴訟である。 モルフォは東京証券取引所マザーズ市場に上場する会社で、デンソーとの間でディープラーニングによる画像認識技術の車載機器への適用等に関する業務提携及び資本提携(第三者割当増資)を行うことを平成27年12月11日に公表した。原告は、同年8月24日及び26日に、モルフォ株式合計400株を約159万円で買い付けていたところ、金融庁は、原告が遅くとも同年8月10日までに、モルフォの業務執行を決定する機関がデンソーとの業務上の提携を行うことについての決定をした旨の重要事実を知りながら株式を買い付けたとして、金融商品取引法175条1項に基づく課徴金納付命令を発した。 【争点】 本件の争点は2つある。第1に、モルフォの代表取締役であるAが金商法166条2項1号所定の「業務執行を決定する機関」に該当するか否かである。原告は、モルフォにおける事業面の業務執行はAと原告の合議体が決定していたと主張した。第2に、Aがデンソーとの「業務上の提携」を「行うことについての決定」をした時期が遅くとも平成27年8月4日であるか否かである。被告(国)は、同日のデンソーとの打合せ後にAが「分かりました」と回答したことをもって提携に向けた決定がなされたと主張した。 【判旨】 裁判所は、争点1について、Aはモルフォの創業者であり、設立以降代表取締役を務め、発行済株式総数の約1割を保有する筆頭株主であったこと、本件提携においても取締役会を招集せずに重要な意思決定を行っていたこと等から、Aは「業務執行を決定する機関」に該当すると判断した。原告の合議体であるとの主張に対しては、Aが適宜原告と相談しつつその助言を踏まえて意思決定をしていたにすぎないと評価した。 しかし、争点2について、裁判所は被告の主張を排斥した。8月4日の打合せは、デンソーがモルフォにデモンストレーションを求め、モルフォがこれに応じることとしたものにすぎず、デンソー自身も技術的成立性を見極めたいとする段階で、モルフォとの業務提携の規模や内容について具体的に検討した形跡はないとした。また、デンソーから資本業務提携の提案がなされたのは9月11日の打合せ後の会食が初めてであり、それ以前のモルフォの業務はデンソーに対する通常の営業活動の域を出ないものであったとした。結局、Aが8月10日までに「業務上の提携」を「行うことについての決定」をしたとは認められず、原告がインサイダー情報を知りながら株式を買い付けたとは認められないとして、課徴金納付命令を違法と判断し、取り消した。