廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反,建造物等失火被告事件
判決データ
- 事件番号
- 令和2わ630
- 事件名
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反,建造物等失火被告事件
- 裁判所
- 神戸地方裁判所
- 裁判年月日
- 2021年1月26日
- 裁判官
- 伊藤太一
AI概要
【事案の概要】 被告人は、令和2年6月8日、兵庫県赤穂市の自宅敷地内において、枯れ草等約20.1キログラムを焼却した(廃棄物処理法違反)。その際、敷地内には古いタイヤや毛布等の可燃物が自宅家屋に近接して放置されており、北西側・北東側にはそれぞれ住民が居住する木造家屋が隣接していた。被告人は十分な消火用水の準備等の消火措置を講じることなく枯れ草に点火し、火元から離れた場所で喫煙していたところ、火がタイヤ等を介して自宅家屋に燃え移り、さらに隣接する家屋にも延焼して、隣家1棟を全焼、1棟を半焼させた(失火罪)。被告人は車上生活をしており自宅が荒れ果てた状態にあったことが、日常的な廃棄物焼却の背景にあった。なお、本件の手続経緯には特異な事情がある。検察官は当初、重過失失火罪で地方裁判所に起訴したが、裁判所は重過失を認めず失火罪にとどまるとして管轄違いの判決を言い渡した。その後、検察官は自ら上訴権を放棄して同判決を確定させた上で、失火罪に訴因変更するとともに、一度は起訴しなかった廃棄物処理法違反を追加起訴し、併合管轄を根拠に再び地方裁判所での審理を実現させた。 【争点】 第一の争点は、失火罪における注意義務違反の有無である。弁護人は、被告人方には水道栓が存在しており消火措置を講じていたと主張した。第二に、廃棄物処理法違反と失火罪の罪数関係(併合罪か観念的競合か)が問題となった。第三に、未決勾留日数の算入の基礎となる勾留期間の範囲が争点となった。さらに裁判所は、職権により本件公訴提起の適法性についても検討した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、注意義務違反について、水道栓が存在するだけでは足りず、出火防止のための適切な手段が具体的に講じられていなければならないとし、被告人は水道栓から離れた場所で喫煙しており直ちに対応できる準備をしていなかったとして、弁護人の主張を排斥した。罪数関係については、失火罪の実行行為は点火という作為ではなく不十分な防火措置という不作為であるとし、廃棄物処理法違反とは実行行為が異なるため併合罪と判断した。未決勾留日数については、公訴事実の同一性が認められる限り、手続的に分断があっても分断前後の全勾留日数を算入の基礎とすべきとした。公訴提起の適法性については、検察官が管轄違い判決を自ら確定させながら、起訴価値がないと一度判断した廃掃法違反をあえて追加起訴して地裁管轄を得た行為は「刑訴法1条の趣旨に整合しない不相当なもの」と厳しく批判したが、被告人の手続的負担が不当に増加したとまではいえず、違法無効ではないとして実体判断を行った。量刑については、失火罪は隣家全焼・半焼という重大な結果に加え被害回復もなく法定刑上限で処断すべきとし、廃掃法違反は罰金刑を選択した上で、求刑(懲役6月及び罰金50万円)に対し、罰金80万円を言い渡した。