発信者情報開示請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、漫画家である原告(ペンネーム「中曽根ハイジ」)が、自身の著作物である漫画「望まぬ不死の冒険者」(1巻1話)の電子データが、P2Pファイル共有ソフト「ビットトレント」を通じて無断で送信・共有されたとして、プロバイダであるビッグローブ株式会社に対し、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、著作権(公衆送信権)を侵害した発信者の氏名又は名称及び住所の開示を求めた事案である。被告は、令和2年7月11日午後2時50分43秒に、問題のIPアドレスを割り当てられた電気通信設備の利用者に関する情報を保有していた。ビットトレントは、中央サーバーを介さず個々の使用者間で直接ファイルを共有するP2P方式のプロトコルであり、特定のファイルをダウンロードした使用者は自動的にそのファイルの提供者(ピア)として登録され、他の使用者からの要求に応じてファイルを送信する仕組みとなっている。 【争点】 主な争点は、(1)原告が本件著作物の著作権を有するか、(2)侵害情報の流通によって原告の著作権侵害が明らかといえるか、(3)開示を求める情報が権利侵害に係る発信者情報であるか、(4)当該情報が損害賠償請求権の行使のために必要であるか、の4点である。被告は、ビットトレントの仕組み及び原告代理人による調査の詳細が不明であるとして、著作権侵害が明らかとはいえないと主張した。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を全部認容した。まず、証拠及び弁論の全趣旨から、原告が本件著作物の著作権を有することを認定した。次に、ビットトレントの仕組みとして、ファイルをダウンロードした使用者は端末の電源が入りインターネットに接続されている限り、不特定の者に対し自動的にファイルを送信する状態となることを認定した上で、氏名不詳者がビットトレントを使用して本件著作物の電子データをダウンロードし自己の端末に保存することにより、自動公衆送信し得るようにしていたことは明らかであると判断した。そして、著作権法上の権利制限事由その他不法行為の成立を阻却する事由は認められないとして、原告の著作権(公衆送信権)の侵害を認め、被告が保有する発信者情報の開示を命じた。