商標権移転登録手続請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告は自動車部品等の製造販売を目的とする株式会社であり、被告は自動車部品等の販売会社であるカルマの代表取締役である。被告は平成8年に「CORaZON コラゾン」の商標登録出願を行い、平成9年に商標権の設定登録を受けた。カルマはこの商標を付した自動車部品等を販売するコラゾン事業を国内外で展開していた。 原告はカルマに対し継続的に自動車用品等を販売していたが、カルマの売買代金の滞納が2000万円以上に達した。そこで原告とカルマは平成27年春頃までに、原告がカルマに対する売買代金の請求をしないこと、原告がカルマからコラゾン事業を引き継ぐこと、被告及びカルマの従業員2人を原告が雇用すること等を内容とする合意をした。原告は同年4月からコラゾン事業を行い、被告らを雇用した。本件商標の国際登録については同年中に被告から原告への名義変更が完了したが、日本の商標権については移転登録がされないまま、被告は平成29年2月に原告を退職し、その後、本件商標権の存続期間の更新登録を自ら行った。原告は被告に対し、売買契約に基づき本件商標権の移転登録手続を求めて提訴した。 【争点】 被告が原告に対し本件商標権を譲渡したか否か。被告は、カルマは財務強化目的でコラゾン事業を原告との共同運営としただけであり、事業譲渡も商標権の譲渡もしていないと主張した。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を認容した。まず、本件合意の内容がコラゾン事業の譲渡であったと認定した。原告がカルマの従業員との雇用契約やリース契約上の地位を承継し、取引先への支払が原告口座に移行したこと、被告から国際登録に基づく商標権の移転を受けたこと、原告とカルマの間の債権債務関係が整理されたこと等を総合的に考慮した。 次に、コラゾン事業にとって極めて重要な「CORaZON コラゾン」商標について、国際登録に基づく商標権は原告に移転されたにもかかわらず、日本の商標権のみを被告に留保するのは極めて不自然であるとした。さらに、被告自身が平成27年6月に原告に送信したメールで「商標更新と同時に名義変更料金を御社でも一度ご確認お願いします。アメリカと日本は既に更新していましたので、名義だけの変更になります。」と記載しており、被告も日本の商標権について原告への名義変更が必要であると認識していたと認定した。日本の商標権については存続期間がまだ残っていたため、更新時に移転登録を行う合意がされたとの原告代表者の陳述は、自然な事実経過として理解できる合理的なものであると判断し、被告が原告に本件商標権を譲渡したものと認めた。