行政文書一部不開示処分取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告が、防衛大臣に対し、行政機関情報公開法に基づき、陸上自衛隊北部方面隊所属の自衛隊員の自殺者に関する行政文書(年度ごとの人数、所属駐屯地ごとの人数、自殺者の年齢、未婚・既婚の別等)の開示を請求したところ、防衛大臣は、当該文書に記録された情報が同法5条1号の不開示情報(個人識別情報)に該当するとして、氏名・連番等を除くほぼ全ての項目を不開示とする一部不開示決定を行った。本件対象文書は、陸上幕僚監部の自殺防止担当者が各年度の自衛隊員の自殺に関する情報を表形式で取りまとめたもので、1行につき1名の自殺者について、所属・階級・年齢・自殺の原因・方法・遺書の有無など多数の項目が記載されていた。原告は、氏名以外の不開示部分の取消しを求めて提訴した。 【争点】 (1) 本件不開示部分に記録された情報が法5条1号前段の個人識別情報に該当するか。(2) 同号後段の個人権利利益侵害情報に該当するか。(3) 法6条2項に基づく部分開示の可否として、各項目が個人識別部分に該当するか、また個人識別部分を除いた場合に個人の権利利益が害されるおそれがあるか。特に、モザイク・アプローチにおける「他の情報」の範囲について、一般人が入手可能な情報に限定すべきか(原告)、親族・同僚等が保有する情報も含むか(被告)が争われた。 【判旨】 裁判所は、本件不開示部分に記録された情報は全体として法5条1号前段の個人識別情報に該当すると判断した。表形式で1行につき1名の情報が記録され、各行に氏名が含まれている以上、氏名以外の項目も含めた情報全体が個人識別情報となる。その上で、法6条2項に基づく部分開示の可否を詳細に検討した。モザイク・アプローチにおける「他の情報」の範囲については、法が何人にも開示請求権を認め、親族や同僚からの請求も想定されることから、これら特定個人に近しい者が保有・入手可能な情報も含むとし、原告の主張(一般人基準)を退けた。各項目の個人識別部分該当性について、「事故日時」「所属」「駐屯地」「階級」「方面」「性別」「職種」「年齢」等は親族・同僚の情報との照合により個人を識別し得るとした一方、「曜日」「学歴」「手段」「出身」「既婚・未婚」等は個人特定に資する程度が弱く、個人識別部分に当たらないとした。さらに、個人識別部分に当たらない項目のうち「偏差値」「段階点」等の適性検査結果は類型的・数値的表現にすぎず権利利益侵害のおそれがないとし、「備考(遺書の有無)」も遺書の内容とは異なり人格的利益と密接に関連しないとして部分開示を命じた。他方、自殺の要因に関する「診断」「主要因」「原因」「処分歴」等は人格的利益と密接に関連し、部分開示の対象とならないとした。以上により、原告の請求を一部認容し、不開示決定の一部を取り消した。