課徴金納付命令処分取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 株式会社モルフォの取締役であった原告が、モルフォと株式会社デンソーとの業務上の提携に関する重要事実(インサイダー情報)を知りながら、公表前にモルフォ株式400株(合計159万5000円)を買い付けたとして、金融庁長官から金融商品取引法175条1項に基づき課徴金133万円の納付を命じられた。原告はこの課徴金納付命令の取消しを求めて出訴した。 モルフォは画像処理技術の研究開発等を目的とする上場会社であり、デンソーは自動車部品の大手メーカーである。デンソーは車載カメラにディープラーニングを用いた画像認識技術を組み込むことを検討しており、平成27年6月以降、モルフォとの間で打合せを重ねていた。同年12月11日、両社は業務提携及び資本提携を公表した。被告(国)は、モルフォの代表取締役Aが遅くとも同年8月4日までに業務上の提携を行うことについての決定をしており、原告は同月10日までにその重要事実を知りながら同月24日及び26日に株式を買い付けたと主張した。 【争点】 1. モルフォの代表取締役Aが金商法166条2項1号所定の「業務執行を決定する機関」に該当するか。 2. 同機関がデンソーとの「業務上の提携」を「行うことについての決定」をした時期が遅くとも平成27年8月4日であるか。 【判旨】 裁判所は、争点1について、Aはモルフォの創業者であり設立以来の代表取締役で、発行済株式総数の約1割を保有する筆頭株主であったこと、本件提携においても取締役会を招集せず重要な意思決定を行っていたことなどから、Aは「業務執行を決定する機関」に該当すると判断した。原告はAと原告の合議体が意思決定機関であると主張したが、裁判所はAが原告と適宜相談しつつもその助言を踏まえて自ら意思決定をしていたにすぎないと退けた。 他方、争点2について、裁判所は被告の主張を排斥した。平成27年6月15日の初回打合せは双方の事業紹介にとどまり、NDAの締結も営業活動上の通常の手続にすぎないと認定した。同年8月4日の打合せについても、デンソーは技術的成立性を見極めたいとする段階であり、クロスコンパス等他社も候補として検討していたこと、モルフォ社内でも通常の営業活動の一環として扱われていたことなどから、この時点で一般投資家の投資判断に影響を及ぼす程度に具体的な内容を持つ「業務上の提携」の決定がされたとは認められないとした。資本業務提携の提案がなされたのは同年9月11日の会食が初めてであり、それ以前はモルフォの通常のビジネスモデルの範囲内の業務であったと評価した。 以上から、原告が同年8月10日までに重要事実を知りながら株式を買い付けたとは認められないとして、課徴金納付命令は違法であると判断し、原告の請求を認容してこれを取り消した。