AI概要
【事案の概要】 三菱自動車工業が製造したeKシリーズ(eKワゴン、eKスペース等)及び日産自動車が販売したデイズシリーズについて、国土交通省の定める測定方法(JC08モード)による燃費性能よりも優れた虚偽の燃費値がカタログやウェブサイトに表示されていたことが平成28年4月に発覚した(いわゆる三菱自動車燃費偽装事件)。平成25年から平成28年にかけてこれらの車両を購入した原告ら(最終的に30名)が、(1)被告三菱自動車に対し、故意の不法行為又は使用者責任に基づく損害賠償を、(2)被告販売店らに対し、消費者契約法4条1項1号(不実告知)に基づく売買契約の取消しによる不当利得の返還を、それぞれ求めた事案である。燃費偽装は、三菱自動車の性能実験部及び認証試験グループにおいて、走行抵抗の測定に法定の「惰行法」と異なる方法を用いたり、走行抵抗を恣意的に改ざんしたりして行われたものであった。 【争点】 主な争点は、(1)被告三菱自動車に故意不法行為が成立するか、(2)使用者責任が成立するか、(3)消費者契約法4条1項1号に基づき売買契約を取り消すことができるか、(4)取消しの場合に返還を請求できる範囲、(5)被告販売店らが車両の使用利益の返還を求めることができるかであった。 【判旨】 裁判所は、被告三菱自動車に対する請求をいずれも棄却した。故意不法行為については、燃費偽装は同社の性能実験部等の一部で行われたものであり、法人自らが組織的にこれを推進したとは認められず、代表者に故意があったともいえないとした。使用者責任については、被用者が走行抵抗を改ざんしたことと、原告らが車両を購入したこととの間に相当因果関係がないと判断した。 一方、被告販売店らに対する消費者契約法に基づく取消しの主張については、原告2名を除き認容した。カタログ等に虚偽の燃費値を記載して交付したことは「勧誘」に際しての「不実告知」に当たり、燃費値は軽自動車購入の判断に通常影響を及ぼす「重要事項」に該当するとした。返還額については、既払金から税金の納付代行費用、自賠責保険料、各種手続費用等の諸費用を控除し、さらに車両の使用利益を控除した額を認容した。使用利益の算定にはカーリース料金の7割を基準とし、消費者契約法に基づく取消しであっても使用利益の返還義務は否定されないとした。車両の引渡しと金員の支払は同時履行の関係にあるとして、引換給付判決とした。