強盗殺人未遂,強盗傷人
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、被害者A(当時34歳)から約100万円の借金をしていたところ、保証人を立てることを求められ、保証人が見つかったと嘘をついた。ゴールデンウィーク中に保証人を連れてくるよう言われて焦りを募らせた被告人は、Aの背後から石頭鎚で頭部を殴打して借用書を強取するとともに、借入金の返済を免れようと計画した。令和2年5月2日夜、愛知県大府市の建物内で、部屋から出てきたAの頭部等を重量約880グラムの石頭鎚で少なくとも5回殴打し、その反抗を抑圧した。しかし、物音を聞いて駆けつけたC(当時60歳)に発見されたため、借用書の強取及び返済免脱の目的は遂げられなかった(強盗殺人未遂)。Aは頭蓋骨陥没骨折、左脳挫傷等の重傷を負い、全治不能の失語症及び右半身麻痺の後遺症が残った。さらに被告人は、警察への通報を阻止するため逃げ出したCを追いかけ、その頭部を石頭鎚で1回殴打し、全治約3週間を要する右頭頂骨陥没骨折等の傷害を負わせた(傷害)。 【争点】 本件の争点は、Aに対する犯行時における被告人の殺意の有無である。被告人は、Aを殴って気絶させようとしただけで、死ぬかもしれないとは思わなかったと主張した。これに対し裁判所は、(1)石頭鎚は殺傷能力の高い凶器であること、(2)頭蓋骨が陥没骨折し多量に出血するほどの相当強い力で少なくとも5回殴打しており、人が死ぬ危険性が高い行為であったこと、(3)被告人は仕事で石頭鎚を日常的に使用しておりその危険性を十分認識していたこと、(4)犯行当時の状況を記憶しており自身の行為の意味を理解していたこと、(5)手加減して殴ったのではないと被告人自身が認めていることなどから、行為の危険性を認識しながらあえて犯行に及んだとして殺意を認定した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人を懲役25年に処した(求刑懲役27年)。量刑上最も重視されたのはAに対する犯行結果の重大性である。当時34歳で土木作業に従事していたAは、全治不能の失語症と右半身麻痺により、話す・聞く・読む・書くことができなくなり、一生他者の介助なしには生活できない状態となった。犯行態様も、石頭鎚という危険な凶器で頭部を少なくとも5回殴打する比較的強い殺意に基づく執拗なものであった。動機も、借金の返済を免れるという身勝手なもので酌量の余地はなく、Cに対する犯行も逮捕回避目的の危険な行為であった。他方、被告人が殺意以外の事実を認め反省の態度を示していること、前科前歴がないこと、内妻が家族関係を維持する意向を示していることなどの事情も考慮されたが、強盗目的が未遂にとどまった点を踏まえても、同種事案の中では重い部類に属するとされた。