特許権侵害損害賠償請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告(総合建設会社)は、「コンクリート造基礎の支持構造」に関する特許(特許第3887248号)の特許権者である。本件特許の請求項2に係る発明(本件発明)は、コンクリート造基礎を場所打ちコンクリート杭に「載置」した状態で支持する構造であって、杭頭部におけるコンクリートの設計基準強度が基礎におけるそれよりも大きいことを特徴とするものである。従来、杭と基礎は剛接合するのが一般的であったが、剛接合に伴う過大な曲げ応力や配筋の複雑化等の問題を解消するため、基礎を杭頭部に載せるだけの「載置」方式を採用し、かつ杭頭部の損傷防止のため高強度コンクリートを用いる点に技術的特徴がある。原告は、被告(同じく総合建設会社)が「スマートパイルヘッド工法」により建設した10棟の構造物における基礎の支持構造が本件発明の技術的範囲に属すると主張し、1億5000万円の損害賠償を請求した。なお、本件特許に対しては過去に2度の無効審判が請求されたが、いずれも無効理由は認められないとの審決が確定している。 【争点】 主な争点は、(1)被告各構造が本件発明の技術的範囲に属するか(構成要件充足性)、(2)損害の発生の有無及びその額である。争点(1)では、特に構成要件Aの「載置」の該当性が中心的に争われた。被告は、鋼管コンクリート部は杭頭部とは別部材であり基礎と杭頭部は離間しているため「載置」に該当しないこと、基礎と杭が水平方向に拘束されているため「縁が切れた状態」にないことを主張した。さらに被告は、原告が別件無効審判で矛盾する主張をしていたとして包袋禁反言を主張した。構成要件Bについては、被告構造物の一部で杭頭部の設計基準強度が基礎部と同等以下であることも争われた。 【判旨】 裁判所は、被告構造物10棟のうち6棟(被告構造物1・2・3・5・6・7)について特許権侵害を認め、4184万0755円の損害賠償を命じた。構成要件Aについて、鋼管コンクリート部は杭頭鋼管内部と杭頭部型枠内部に同じ設計基準強度のコンクリートを同時に打設して形成されるものであるから、杭頭接合部と一体であり「場所打ちコンクリート杭」に含まれると判断した。「載置」の意義については、剛接合しない状態を指し、凹部に杭頭部を挿入する構造や水平力を伝達する凹凸部を設ける構造も含むと解釈し、被告各構造はいずれも「載置」に該当するとした。包袋禁反言の主張も退けた。他方、構成要件Bについては、被告構造物4・8・9・10は杭頭部の設計基準強度が基礎部と同等以下であるため充足しないと判断した。損害額の算定では、特許法102条2項により場所打ちコンクリート杭全体を限界利益算定の対象とし、計算鑑定の結果(合計4605万0830円)を採用した上で、構成要件Aに係る載置構造が公知技術であった点等を考慮して3割の推定覆滅を認め、102条3項(実施料率3%)と比較して各構造物ごとに高い方の額を損害として認定した。