建造物侵入,窃盗被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、金品窃取の目的で、令和元年11月30日午後7時頃から翌12月1日午前7時59分頃までの間、広島県大竹市所在の店舗に無施錠の窓から侵入し、現金合計2万8000円及びトートバッグ1個(時価約3000円相当)を窃取した建造物侵入・窃盗の事案である。 被告人については、別件の建造物侵入・窃盗(広島市内で発生した2件)を被疑事実とする逮捕状(別件逮捕状)が既に発付されていたが、所在不明のため執行できていなかった。本件犯行後、被告人がインターネットカフェに入店したとの通報を受け、廿日市警察署のA巡査長が被告人を発見したが、被告人が逃走したため追跡し、手錠を掛けて逮捕した。その際、A巡査長が「緊急逮捕」と発言した可能性があった。被告人は別件逮捕状に基づき海田警察署に引致された後、別件については勾留請求されずに一旦釈放され、改めて本件侵入窃盗を被疑事実として通常逮捕・勾留・起訴された。 【争点】 弁護人は、当初の逮捕は本件侵入窃盗を被疑事実とする緊急逮捕であり、その適法要件を欠く上、検察官送致までの時間制限も超過した重大な違法があるから、本件公訴は棄却されるべきであると主張した。これに対し、当初の逮捕が別件逮捕状の緊急執行であったのか、本件侵入窃盗についての緊急逮捕であったのかが主要な争点となった。 【判旨(量刑)】 広島高裁は控訴を棄却した。まず、当初の逮捕の性質について、A巡査長は別件逮捕状の緊急執行を行う意図であり、本件侵入窃盗についての緊急逮捕の意図はなかったと認定した。その根拠として、(1)A巡査長は事前にB警部補と別件逮捕状の緊急執行もあり得ると話し合っていたこと、(2)当初の逮捕時点で本件侵入窃盗の被害届すら出ていなかったこと、(3)逮捕後の一連の手続が別件逮捕状に基づいて行われたこと、(4)両警察官の証言が客観的証拠に裏付けられていることを挙げた。A巡査長が「緊急逮捕」と言い間違えた可能性については、適正手続への理解不足による言い間違いとして排斥した。 もっとも、別件逮捕状の緊急執行に際し、被疑事実の要旨の告知が不十分であった違法は認めた。A巡査長が告知した内容は「海田署が逮捕状を取得している」「被疑事実はgの窃盗事件である」という程度にとどまり、罪名や犯行態様等の具体的内容が告げられていなかった点は、刑訴法の要請を充足しないとした。しかし、逮捕からおおむね1時間後には別件逮捕状が提示され被疑事実の要旨が示されていること、本件侵入窃盗については別途司法審査を経た通常逮捕がされていることなどを考慮し、手続の違法性は全体として重大とまではいえず、公訴棄却を求める主張を退けた原審の判断は正当であるとした。