発信者情報開示請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 控訴人は、自ら制作した動画(控訴人動画)を「家畜道」というウェブサイトに投稿していたところ、氏名不詳者(ユーザ名A)が平成29年8月にアダルト動画サイト(本件サイト)に同一の動画を無断で投稿した。控訴人は、本件サイトの運営者であるキプロス法人に発信者情報開示仮処分を申し立てたが、同法人は投稿時のIPアドレスは保有していないとして、ユーザ名Aが最後にログインした際のIPアドレス(最終ログインIPアドレス)のみを開示した。そこで控訴人は、当該IPアドレスを割り当てた経由プロバイダであるソフトバンクに対し、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、最終ログイン者及び投稿日時頃のIPアドレス割当先の発信者情報の開示を求めた。原審(東京地裁)は請求を棄却し、控訴人が控訴した。なお、控訴審において控訴人は、動画の静止画像(サムネイル画像)に係る公衆送信権、氏名表示権及び同一性保持権の侵害も追加主張した。 【争点】 主要な争点は、(1)最終ログイン者の情報がプロバイダ責任制限法4条1項の「当該権利の侵害に係る発信者情報」に該当するか(争点2-1)、(2)投稿日時頃のIPアドレス割当先の情報が同項の発信者情報に該当するか(争点2-2)である。控訴人は、最終ログイン者が投稿者と同一であること、仮に同一でなくとも送信可能化権侵害の主体や共同不法行為者・幇助者と評価できること、また最終ログイン直近に動画が再生されサムネイル画像が表示されることで公衆送信権・氏名表示権・同一性保持権の侵害が生じていることなどを主張した。 【判旨】 知財高裁は控訴を棄却した。まず、法4条1項・省令の「発信者」とは、特定電気通信設備の記録媒体に情報を記録し又は送信装置に情報を入力した者をいうところ、侵害情報の送信に当たる行為は本件投稿行為であるとした。動画の再生やサムネイル画像の表示は、記録媒体への情報の記録や送信装置への入力を伴うものではなく、これを侵害情報の送信ということはできないと判断した。最終ログイン情報は投稿行為そのものの発信者情報ではなく、仮に準備行為等と密接に関係するログイン情報も開示対象になると解しても、本件投稿行為から約1年8か月後の最終ログインは投稿行為との関連が極めて希薄であるとした。最終ログイン者と投稿者の同一性についても、パスワード共有の可能性が否定できず、ログイン記録が6か月分しか保存されていないこと等から同一性は認定できないとした。投稿日時頃のIPアドレス割当先情報についても、最終ログイン時と投稿時で同一人物に割り当てられていた証拠がないとして、いずれの発信者情報も開示対象に当たらないと結論づけた。