特許権侵害差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、「製鋼スラグ炭酸固化体ブロックの製造方法」に関する特許権(特許第5606596号)を有する原告が、被告(JFEスチール株式会社)の製造・販売する製鋼スラグ炭酸固化体ブロック(商品名「マリンブロック」)の製造方法が上記特許発明の技術的範囲に属すると主張して、特許法102条3項に基づく損害賠償金5000万円の支払を求めた事案である。 本件特許発明は、製鉄時の副産物である製鋼スラグを利用して海浜用ブロックを製造する方法に関するものである。従来の製造方法では、ブロック材の有効性や耐久性に懸念が残されていたところ、本件発明は、第1次処理として粉末化した製鋼スラグを純水に接触させて炭酸化し、アラゴナイトを析出させた上で加熱溶融してから型枠に詰め、排ガス中の二酸化炭素と反応させてアラゴナイト構造を形成し、さらに第2次処理として海水又は人工海水に接触させてカルサイト構造の形成を促進させるとともに開気孔率を向上させることを特徴としていた。これに対し、被告方法は、製鋼スラグの破砕物を工業用水で濡らし、型枠に詰めてほぼ常温で二酸化炭素と反応させ、その後海水に漬けて引き揚げるというものであった。 【争点】 主な争点は、被告方法が本件発明の構成要件を充足するか否か(構成要件充足性)と、損害額であった。具体的には、構成要件A(粉末化)、B(純水による炭酸化)、C(加熱溶融)、D(溶融物の型枠充填)、F(アラゴナイト構造の形成)、H(開気孔率の向上)の各要件について充足性が争われた。 【判旨】 裁判所は、被告方法は本件発明の技術的範囲に属しないと判断し、原告の請求を棄却した。まず、構成要件Bについて、被告方法が「純水に接触させて炭酸化」する工程を含むと認めるに足りる証拠はないとした。構成要件C及びDについても、被告方法が製鋼スラグを加熱溶融する工程を含むと認める証拠はなく、加熱溶融を前提とする構成要件Dも充足しないとした。構成要件Fについても、被告方法がアラゴナイト構造を形成する工程を含むと認める証拠はないとし、構成要件Hについても、被告方法が開気孔率を向上させるものであると認める証拠はないとした。以上から、その余の構成要件を検討するまでもなく、被告方法は本件発明の技術的範囲に属しないと結論づけた。