特許取消決定取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告(リケンテクノス株式会社)は、「(メタ)アクリル酸エステル共重合体」に関する特許(特許第6419863号)を有していた。この発明は、建築基準法に規定する不燃性を有し、かつタック性・施工性・耐熱性・粘着性に優れた化粧シートの粘着剤層に用いるための共重合体であり、構成モノマーの配合量について「10≦b+40c≦26(但し、4≦b≦14、0.05≦c≦0.45)」という数値限定を特徴としていた。 これに対し特許異議の申立てがされ、特許庁は、本件発明は3件の引用例(自動車外装用接着剤、半導体ウエハ異物除去用粘着テープ、ダイシング・ダイボンド兼用粘接着シートに関する各発明)に基づき当業者が容易に発明できたものであるとして、進歩性を否定し、請求項1に係る特許を取り消す決定をした。原告はこの決定の取消しを求めて知的財産高等裁判所に出訴した。 【争点】 本件発明が各引用例発明に対して進歩性(特許法29条2項)を有するか否か。具体的には、(1)引用例1発明との相違点1(水酸基含有モノマーの追加)及び相違点2(配合量の数値範囲)の容易想到性、(2)引用例2発明との相違点4(配合量の数値範囲)の容易想到性、(3)引用例3発明との相違点6(配合量の数値範囲)の容易想到性が争われた。 【判旨】 裁判所は、本件決定を取り消した。 引用例1発明について、本件発明とは技術分野や課題が異なり、改良を加える動機付けが乏しいこと、甲7文献には第3成分としてエポキシ基を有するモノマーと水酸基を有するモノマーの2種を選択すべき旨の開示がなく、その組合せによる効果に関する記載もないことから、相違点1に係る構成への動機付けを認めなかった。相違点2についても、各モノマーは粘着力や凝集力の点で等価でなく、グリシジルメタクリレートの配合量を下限値未満に減少させる技術的理由が見いだせないとして、容易想到性を否定した。 引用例2発明及び引用例3発明についても同様に、本件発明とは技術分野や課題が異なること、アクリル酸グリシジル等の配合量を10分の1以下ないし40分の1以下に大幅に減少させる技術的理由が文献の記載からは見いだせないことを理由に、いずれの相違点についても容易想到性を否定した。被告が乙号証に基づき主張した「当業者が普通に行っている事項」との反論に対しても、技術分野の相違や数値範囲を満たさない合成例の存在を指摘して排斥した。以上から、取消事由1ないし3はいずれも理由があるとして、特許取消決定を取り消した。