発信者情報開示請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 漫画家である原告が、P2P方式のファイル共有ソフトウェア「BitTorrent」のネットワーク上で、自身の漫画作品(全2巻)が無断で複製・共有されたとして、通信事業者である被告(NTTぷらら)に対し、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、著作権侵害行為を行った発信者の氏名・住所等の情報開示を求めた事案である。 原告の訴訟代理人は、BitTorrentの互換クライアントソフト「qBittorrent」を用いて調査を行い、被告が管理するIPアドレスが付与された端末が、原告の漫画作品の画像データを含むファイルをネットワーク上で共有(送信可能化)し、実際に送信(自動公衆送信)していたことを確認した。BitTorrentは、ファイルをダウンロードしたユーザーが自動的にアップロード側(ピア)としても登録される仕組みを有しており、IPアドレスレベルでの匿名性がないという特徴がある。 【争点】 主な争点は、(1)原告が漫画作品の著作者であるか、(2)侵害情報の流通により原告の著作権侵害が明らかであるか、(3)発信者情報が「権利の侵害に係る発信者情報」に該当するか(調査手法の信頼性、VPNによるIPアドレス偽装の可能性)、(4)開示を求める正当な理由があるかであった。被告は、原告の著作者性に疑義を呈したほか、qBittorrentが公式クライアントでないこと、VPN技術によるIPアドレス偽装の可能性、調査手法の技術的根拠の不足を指摘して争った。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を全部認容した。まず著作者性について、原告の筆名が著作権法14条の「周知のもの」とまでは認められないとして同条の推定は否定したものの、陳述書の記載が電子書籍配信契約の合意書や作品上の表記等から裏付けられるとして、原告が著作者であると認定した。次に著作権侵害について、調査時点でIPアドレスが付与された端末にファイル全部が保存され、実際に毎秒12バイトの速度で送信されていたことから、送信可能化権及び自動公衆送信権の侵害を認めた。被告が主張した調査手法の信頼性についても、BitTorrentの仕様は公開されており互換ソフトのいずれでも同様に参加可能であるから、非公式クライアントの使用は信頼性を損なわないとした。VPNによるIPアドレス偽装の主張についても、現にVPN技術を用いて偽装していたことを認める証拠はないとして退けた。開示の正当な理由も認め、被告に発信者情報の開示を命じた。