AI概要
【事案の概要】 本件は、スタンフォード大学(原告)が、「高度なイメージング特性を有する顕微鏡イメージング装置」に関する特許出願(国際出願)について、拒絶査定不服審判の不成立審決の取消しを求めた事件である。原告は、米国における基礎出願に基づきパリ条約の優先権を主張して、平成23年8月25日に特許協力条約(PCT)に基づく国際出願を行った。その後、同年9月29日に明細書の欠落部分(AppendixA・B、計70頁)について「引用による補充」を米国特許商標庁に請求し、認められた。一方、本願発明と同一の発明が記載された論文が同年9月11日に学術誌で公開された。日本の特許庁は、平成24年10月1日より前の国際出願には「引用による補充」に関する条約規則を適用しないとする経過措置をとっていたため、本願の国際出願日を「引用による補充」がされた同年9月29日と認定する通知を行った。原告は所定期間内に「引用による補充」がなかったとする請求をしなかったため、出願日が論文公開日より後の9月29日に確定し、新規性欠如を理由に拒絶審決がされた。 【争点】 (1) 新規性喪失の例外規定(改正前特許法30条2項「意に反して」)の適用の可否、(2) 国際出願日の認定の適法性(本件通知に重大かつ明白な瑕疵があるか、翻訳文提出による黙示的な意思表示が認められるか)、(3) 審決の理由不備の有無。 【判旨】 知財高裁は、原告の請求を棄却した。争点(1)について、裁判所は、本件論文の公表は発明者らの自発的意思に基づくものであり、出願後に「引用による補充」を求めた行為により出願日が繰り下がることは認識し得たと認定した。また、改正前特許法30条4項の手続を国内処理基準時から30日以内に行うことも可能であったとして、「意に反して」公知となった場合には当たらないと判断した。原告が出願日の繰下げを知らなかった点については、日本の特許法についての知識が乏しかったにすぎないとした。争点(2)について、施行規則38条の2の2第4項は、特許庁長官の通知に対して所定期間内に請求することを要件としており、通知前の翻訳文提出行為が同請求に当たらないことは明らかであるとした。欠落部分を翻訳文に含めなかったことをもって黙示的な意思表示と評価することもできないと判断した。争点(3)について、審決の理由は最終的な結論を導き出すのに必要な限度で示されれば足り、本件審決には結論に至る理由が記載されているとして、理由不備の違法はないとした。