特許権侵害差止等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 控訴人(株式会社ヘリオス)は、「無線通信サービス提供システム及び無線通信サービス提供方法」に関する特許(特許第3245836号)の特許権者である。本件特許は、無線通信装置の位置情報に基づいて指定地域内の端末に広告情報を配信するシステム及び方法に関するもので、一度広告を配信した端末が指定地域外に出て再び戻っても同じ広告を再送信しないという構成(構成要件E)を特徴とする。控訴人は、被控訴人(Cinarra Systems Japan株式会社)が提供するインターネット上の広告配信サービス(モバイルちらし)が本件特許を侵害するとして、差止め及び損害賠償1100万円を求めた。原審(大阪地裁)が請求をいずれも棄却したため、控訴人が控訴した。なお、控訴審において、控訴人は訂正審判を請求し、訂正後の発明についても主張を追加した。 【争点】 主な争点は、(1)被控訴人システムが本件発明の構成要件E(端末が指定地域外に出て戻っても同じ広告を再送信しない構成)及び構成要件G(配信数に達するまで広告を送信する構成)を充足するか、(2)本件発明に進歩性が認められるか(特許法29条2項)であった。構成要件Eの解釈について、控訴人は「端末が指定地域にとどまり続ける場合も含め同じ広告を送信しないこと」を意味すると主張し、被控訴人は「端末が指定地域外に出て戻ったことを把握した上で再送信しないこと」のみを意味すると主張して対立した。 【判旨】 知財高裁は、構成要件Eの「戻っても」の「ても」について、国語辞典に基づき仮定の条件を示す用法と解釈し、控訴人の主張する広い解釈(端末が指定地域にとどまり続ける場合も含む)を採用した。その上で、被控訴人システムは、広告主が配信期間を1日以内とし同一端末への配信回数を1回に制限する設定をした場合に構成要件Eを充足すると認定した。他方、構成要件G(配信数に達するまで送信)については、被控訴人システムでは広告主が配信総数を直接指定できず予算と入札結果により配信数が定まる仕組みであるため、充足しないと判断した。しかし、進歩性の判断において、位置情報に基づく広告配信に関する公知文献(乙5)を主引用例とし、広告配信回数を制限する周知技術を副引用例として、本件発明1、本件発明26及び本件訂正発明1はいずれも当業者が容易に想到し得たものと認定した。控訴人が主張した阻害事由(広告は繰り返し見せるほど効果が高いから配信回数制限の適用は排斥される)についても、出願時に既に「バナーバーンアウト」防止のため配信回数を制限することが周知であったことを理由に排斥した。以上から、本件特許は無効にされるべきものであり、権利行使は許されないとして、控訴を棄却した。