特許権侵害差止等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、「屋根煙突貫通部の施工方法及び屋根煙突貫通部の防水構造」に関する特許(特許第5047754号)を有する控訴人(原告)が、被控訴人(被告)に対し、被控訴人の施工方法及び製品が本件特許の技術的範囲に属し特許権を侵害しているとして、特許法100条1項に基づく差止め及び民法709条・特許法102条2項に基づく損害賠償金4752万円等の支払を求めた事案の控訴審である。 本件特許は、ストーブ等の煙突を屋根抜き方式で施工する際の防水構造に関するもので、水切り手段を外部用(アウターフラッシング)と内部用(インナーフラッシング)の2部材に分け、内部水切り部材の固定板を野地板等に密着固定し、固定板外周に防水テープを貼付することで、台風時の雨水吹き上がりにも対応できる防水機能を実現する発明である。 原審(東京地方裁判所)は、本件各発明について、被控訴人が本件特許出願前に施行した「A邸工事」が公然実施された先行技術に当たるとして、本件発明1・3は新規性を欠き、本件発明2・4は進歩性を欠くと判断し、請求を棄却した。 【争点】 主な争点は、A邸工事を主引用例とする本件各発明の新規性欠如又は進歩性欠如の有無であり、控訴審では以下の3点が争われた。(1)A邸工事が本件特許出願前に行われたか否か(工事写真のプロパティの信用性、写真がA邸工事のものであるか)、(2)A邸工事が「公然」実施されたものといえるか(周囲環境から第三者が工事内容を認識し得たか)、(3)本件発明2・4とA邸工事との相違点(インナーフラッシング固定板の軒側にも防水テープを貼付する構成)が容易想到か否か(結露対策としての阻害要因の有無、雨水吹き上がり防止という顕著な効果の有無)。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原判決を相当と判断し、控訴を棄却した。争点(1)について、控訴人が提出した陳述書はあくまで個人の作業方法を前提にした一般論であり、2分間で作業が不可能であることを示すものではないとした。また、写真に不燃材が写っていない点についても、不燃材の装着は被控訴人の施工範囲ではなく別の下請業者が担当するものであったと認定し、写真がA邸工事のものでないとはいえないとした。争点(2)について、隣地の駐車場から煙突工事は十分視認可能であったこと、さらに被控訴人から元請の住友林業を通じて下請業者に煙突詳細図が提供され、秘密保持義務を負わない不特定の者が発明を技術的に理解し得る状況にあったことから、公然実施に当たると判断した。争点(3)について、A邸の煙突の屋根貫通位置は軒出であり結露による阻害要因は認められないこと、防水テープを軒側にも貼付して雨水の吹き上がりを防止することは当業者が当然に予期する効果であることから、相違点に係る構成は容易に想到し得ると結論づけた。