AI概要
【事案の概要】 大阪府立高校に在籍していた原告(女子生徒)が、同校の教員らから、校則に基づく頭髪指導として繰り返し髪を黒く染めるよう求められ、これに応じなかったところ、授業への出席や文化祭等の学校行事への参加を禁じる別室指導を示唆されたことから不登校となった事案である。原告は、生来の地毛が茶色であると主張していたが、学校側は中学校への照会結果や頭髪検査での根元の色(黒色)等から地毛は黒色であると認識していた。原告は1年次から2年次にかけて複数回の頭髪指導を受け、その都度黒染めに応じていたが、2年次の夏休みに明るい茶色に染髪して登校したことを契機に、指導に従わない姿勢を明確にし、平成28年9月9日以降登校しなくなった。さらに、原告が3年生に進級した後、学校側は原告の氏名を名列表から削除し、教室から机と椅子を撤去する措置をとった。原告は、これらの違法な頭髪指導と不登校後の不適切な対応により精神的苦痛を受けたとして、被告(大阪府)に対し、国家賠償法1条1項又は安全配慮義務違反に基づき約226万円の損害賠償を求めた。 【争点】 (1) 染髪を禁止する校則及び指導方針の違法性の有無、(2) 校則に基づく原告への頭髪指導における国家賠償法上の違法の有無、(3) 原告の不登校後に名列表から氏名を削除し教室から席を撤去した措置(本件措置)の違法性、(4) 損害額。 【判旨】 裁判所は、校則及び頭髪指導については違法性を否定し、不登校後の名列表・原告席に関する措置についてのみ違法を認め、33万円(慰謝料30万円、弁護士費用3万円)の限度で請求を認容した。 校則の違法性については、高校には学校教育の目的達成のために生徒を規律する包括的権能があり、染髪等を禁止する本件校則は、生徒の学習・運動への注力と非行防止という正当な教育目的に基づくもので、社会通念に照らし合理的であるとした。色落ちした場合に再度染め戻しを求める指導方針についても、校則の実効性確保の観点から合理性を認めた。頭髪指導についても、教員らが合理的根拠に基づき原告の地毛を黒色と認識していたこと、原告の態度に応じた柔軟な対応をしていたこと等から、教育的指導の裁量の範囲内であるとした。 他方、原告が3年生に進級した後に名列表から氏名を削除し教室から席を撤去した措置については、不登校の生徒がこれを知れば、学校から在籍を否定され登校を拒絶されたと感じて心理的打撃を受けることは容易に想像できるとし、原告や保護者への説明もなく、抗議後も大阪府教育庁からの指導があるまで約5か月間継続したことから、教育環境配慮義務における裁量権の範囲を逸脱した違法があると判断した。