公職選挙法違反被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 令和元年7月21日施行の第25回参議院議員通常選挙に際し、広島県選挙区から立候補したAの選挙運動者であった被告人が、共犯者B及びCと共謀の上、いわゆるウグイス嬢(選挙運動用自動車上で投票呼びかけを行う運動員)14名に対し、公職選挙法が定める法定支給限度額(1人1日あたり1万5000円)を超える1日3万円の報酬を、合計204万円にわたり供与したという公職選挙法違反の事案である。被告人はAの夫であるV衆議院議員の政策担当秘書であり、選挙事務所では事務長補佐の肩書で、Vの意向を最も的確に把握できる立場にあった。選挙事務所の実質的な決定権限はVが掌握しており、被告人自身は報酬の支払行為を直接行っていなかったが、ウグイス嬢の報酬額についてVへの確認・伝達を担った点が問われた。 【争点】 本件の争点は、①被告人にウグイス嬢への報酬が法定限度額を超えることの認識があったか否か、②被告人がB及びCと共謀したか否かの2点である。弁護人は、被告人は遊説担当ではなくウグイス嬢の報酬決定・支払に関与していないと主張し、共謀及び正犯性を争った。 【判旨(量刑)】 裁判所は、関係者の公判供述やLINEメッセージ等の客観証拠を総合的に検討した。Uの公判供述から、被告人が令和元年5月21日にウグイス嬢報酬額の確認を依頼され、翌22日に日額3万円であることをUに電話で伝えた事実を認定した。また、Cの公判供述から、6月5日のDグループの報酬交渉後にもCが被告人にVへの確認を依頼し、被告人がこれを引き受けた事実を認定した。裁判所は、ウグイス嬢報酬の決定権限を有するVと被告人との関係性、選挙事務所内で被告人のみがVに報酬額を確認できる立場にあったこと、報酬額の伝達が犯行実現に不可欠であったことを踏まえ、被告人は機械的な情報伝達にとどまらず自己の犯罪として本件に及んだものであるとして、共謀共同正犯の成立を認めた。量刑にあたっては、限度額の2倍もの報酬支払や領収証の偽装工作など違法性が大きいこと、被告人が法定限度額の趣旨を熟知しながら関与したことを指摘する一方、Vの強固な意欲に秘書として従った面も考慮し、懲役1年6月・執行猶予5年(求刑どおり)を言い渡した。