AI概要
【事案の概要】 本件は、「カテーテル組立体」に関する特許出願(分割出願)について、特許庁が進歩性欠如を理由に拒絶査定を維持する審決をしたため、原告(出願人・ドイツ法人ベー・ブラウン・メルズンゲン・アクチエンゲゼルシャフト)がその取消しを求めた審決取消訴訟である。 本願発明は、静脈内カテーテル組立体に関するもので、カテーテルハブ内に配置されたバルブ組立体が、延長チューブの遠位端を閉じつつ加圧流体により開口可能な第1弁部材と、流体の近位方向・遠位方向の双方向の流れを制御する二方弁としての第2弁部材を備えるとともに、針保護組立体を有する構成を特徴とする。特許庁の審決は、本願発明は引用文献1(特表2009-513267号公報)に記載された発明等に基づき当業者が容易に発明できたとして進歩性を否定した。審決は、引用発明の「隔壁」遠位部のスリットが流体の流入・流出を可能とするように開口可能であると認定し、これが本願発明の第2弁部材(二方弁)の構成と一致すると判断していた。 【争点】 主な争点は、(1)引用発明の認定における一致点の認定の誤り及び相違点の看過の有無(引用文献1の隔壁遠位部のスリットが二方弁として機能する構成を有するか)、(2)相違点1(第1弁部材)の容易想到性、(3)相違点2(針保護組立体)の容易想到性である。 【判旨】 知財高裁は、審決を取り消した。裁判所は、まず引用文献1の記載を詳細に検討し、隔壁遠位部のスリットはイントロデューサ針の挿入を容易にするために設けられたものであり、流体の「流入及び流出を可能とするように開口可能」であることを示す記載は引用文献1のどこにも存在しないと認定した。被告(特許庁長官)は、カテーテルハブの中空部に配置された「二方弁」として機能する「スリットを備えた隔壁」を介して流体の注入・除去がされることは技術常識であると主張したが、裁判所は、そのような技術が一般に知られていたとしても、スリットを備えた隔壁が常に二方弁として機能するとまでは認められず、引用文献1の隔壁が本願発明の二方弁構成に相当すると当然に把握できるものではないと判断した。以上から、審決には一致点の認定の誤り及び相違点の看過があり、この看過された相違点の容易想到性を判断することなく進歩性を否定した審決の判断には誤りがあるとして、その余の争点(相違点1・2の容易想到性)について判断するまでもなく審決を取り消した。