AI概要
【事案の概要】 日本国籍を有する父とロシア国籍を有する母との間の嫡出子として日本国内で出生した原告は、出生により日本国籍を取得した。原告の父母は、出生後まもなく駐日ロシア大使館を訪れ、改正前のロシア国籍法(旧ロシア国籍法)15条2項前段に基づく父母の合意文書を作成・提出し、原告はこれによりロシア国籍を取得した。被告(国)は、この取得が国籍法11条1項の「自己の志望によって外国の国籍を取得したとき」に該当するとして、原告の日本国籍は喪失したと主張した。原告は、日本で出生・成長し、日本語を母語とし、一貫して日本の教育を受けて生活しているにもかかわらず、日本国籍を失ったとされた。そこで原告は、日本国籍を有することの確認を求めて本件訴えを提起した。 【争点】 (1) 旧ロシア国籍法15条2項前段によるロシア国籍の取得が国籍法11条1項に該当するか(同項が生来的取得か志望取得かの解釈) (2) 原告に「自己の志望によって」外国の国籍を取得する意思があったといえるか (3) 国籍法11条1項が憲法10条、13条及び22条2項に違反するか (4) 同項が憲法14条1項(平等原則)に違反するか 【判旨】 請求棄却。裁判所は、まず争点(1)について、旧ロシア国籍法15条2項の下では、父母の一方がロシア国籍で他方が異なる国籍を有する子は出生によってはロシア国籍の取得が不確定であり、父母の合意文書の提出によって初めて国籍取得の有無が決定されると認定した。したがって、合意文書の提出はロシア国籍の取得を希望する意思行為であり、法定代理人による外国の国籍の志望取得として国籍法11条1項に該当すると判断した。争点(2)については、原告の父母はいずれもロシア大使館での手続が単なる出生登録ではなく原告のロシア国籍に関する手続であることを認識していたと認定し、仮に手続の意味を十分に理解していなかったとしても、ロシア国籍の取得が自己の意思に基づくことを否定すべき特段の事情は認められないとした。争点(3)については、憲法22条2項の国籍離脱の自由は消極的権利にすぎず、日本国籍の積極的な保持の権利を保障するものではないとした上で、国籍法11条1項の立法目的(重国籍の発生防止と国籍変更の自由の保障)及びその手段はいずれも合理的であり、立法裁量の範囲を逸脱するものではないと判断した。争点(4)についても、志望取得の場合は事前に国籍選択の機会があるため、当然取得や生来的取得の場合と異なる取扱いをすることには合理的関連性があるとして、憲法14条1項違反を否定した。