商標権侵害差止請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 化粧品の販売等を目的とする原告は、化粧品の製造・販売等を目的とする被告との間で、被告が保有していた美容液等に係るブランドの商標権を原告に譲渡する契約(本件譲渡契約)を締結した。原告代表者Aと被告代表者Cは夫婦であり、原告は被告から美容ブランド商品を仕入れて中国に輸出する事業を行っていた。商標権譲渡と同日、原告が被告以外の者に商品製造を発注しないこと等を内容とする覚書(本件覚書)も作成された。しかし、譲渡後に被告が商品代金の値上げや支払条件の変更を一方的に通知し、商品の出荷も拒否するようになったことから、原告は第三者に商品製造を発注するに至った。 本訴は、原告が被告に対し、被告が原告の商標と同一又は類似の標章を付して美容液等を販売していることが商標権侵害に当たるとして、商標法36条に基づく差止め及び侵害行為組成物の廃棄を求めた事案である。反訴は、被告が原告に対し、商標権の譲渡契約は詐欺による取消し又は錯誤無効であり、あるいは原告の覚書違反による債務不履行で解除されたとして、商標権移転登録の抹消登録手続を求めた事案である。 【争点】 主な争点は、(1)被告標章が原告の商標と同一又は類似か、(2)原告の詐欺又は錯誤により譲渡契約が締結されたか、(3)原告に覚書上の債務不履行があり譲渡契約が解除されたか、(4)原告の差止請求が権利濫用に当たるか、であった。特に、商標権譲渡契約と同日に作成された覚書の法的性質、すなわち覚書違反が譲渡契約の効力に影響するか否かが中心的な争点であった。 【判旨】 裁判所は、本訴請求を一部認容し、反訴請求を棄却した。 争点(2)について、原告がブランド事業を全て奪う意図で覚書を遵守する意思なく譲渡契約を締結させたとの被告主張は、被告代表者の憶測に過ぎず、客観的な経緯とも整合しないとして、詐欺取消し及び錯誤無効の主張をいずれも排斥した。 争点(3)について、覚書は譲渡証書とは別に作成され、覚書違反の場合に商標権譲渡の効力がどうなるかの定めがないこと、商標権譲渡の効力が覆る場合は明確であるべきこと等から、覚書上の義務違反があっても譲渡契約に基づく商標権譲渡の効力は覆らないと判断した。被告の利益は覚書上の義務を前提とする請求によって達成されるべきであるとした。 争点(1)について、被告標章は原告の商標と外観・称呼において類似し、被告の美容液・美容クリーム等に加え、美容成分を含むスムージー等の飲料・食品(被告商品11〜13)についても指定商品と類似すると認定した。争点(4)の権利濫用の主張も、前提事実が認められないとして退けた。以上により、美容液等及び被告商品11〜13についての差止め・廃棄請求を認容し、その余の請求及び反訴請求を棄却した。