AI概要
【事案の概要】 道立高校の2年生であった原告が、スキー場でのスキー授業中に行われた実技試験において転倒し、右膝前十字靱帯損傷、右膝半月板損傷及び外傷性腰椎椎間板ヘルニアの傷害を負ったとして、高校を設置する被告(北海道)に対し、国家賠償法1条1項に基づき、通院慰謝料、後遺障害逸失利益、後遺障害慰謝料及び弁護士費用の合計2199万2210円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。原告は、事故当時は吹雪により視界不良であり、かつ小学生らが実技試験のコースに入り込んでいたにもかかわらず、引率教諭らが試験を中断するなどの措置を講じなかった注意義務違反があると主張した。 【争点】 (1) 引率教諭らの注意義務違反の有無(吹雪による視界不良の状況にあったか、小学生らが実技試験のコースに入り込んでいたか) (2) 注意義務違反と本件事故との因果関係の有無 (3) 損害発生の有無及びその額 【判旨】 裁判所は、原告の請求を棄却した。争点(1)について、まず視界不良の主張に関し、スタート地点にいたB教諭、ゴール地点にいたC教諭及び生徒Gがいずれも、当時スタート地点からゴール地点(約150m先)まではっきり見通せていたと証言していることを認定した。原告の友人E及びFも吹雪であったと証言したが、両名とも原告の転倒をスタート地点から見ており約100mの視界はあったこと、Eはスキー場到着時の天候についてスキー場の記録(晴れ)と矛盾する証言をしていること、Fは目撃地点を「下から」から「上から」に大幅に変遷させていることなどから、これらの証言は採用し難いとした。また、リフトの営業運転が休止されていなかったこと、採点者が滑降を評価・採点する実技試験の性質上、視界不良であれば試験の実施自体に至らなかったはずであることも指摘した。次に小学生のコース侵入の主張についても、B教諭、C教諭及びGが、小学生は引率教員の後を一列で左側を滑走しており試験コースに入り込むことはなかったと証言していること、原告とEの間で小学生の来た方向が食い違うこと等から、コース侵入の事実は認められないとした。さらに、C教諭は原告の転倒について、体重移動をしないまま滑降し右のスキー板が左のスキー板に重なって転倒したと具体的に証言しており、原告自身も良い点数のためにスピードを出そうとしていたことを認めていることから、本件事故はスピードコントロールができなくなった原告の単独転倒にすぎないと判断した。以上により、教諭らの注意義務違反の前提となる事実が認められず、その余の争点を判断するまでもなく原告の請求は理由がないとして棄却した。