損害賠償請求控訴事件、同附帯控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 平成29ネ5558
- 事件名
- 損害賠償請求控訴事件、同附帯控訴事件
- 裁判所
- 東京高等裁判所
- 裁判年月日
- 2021年2月19日
- 裁判種別・結果
- その他
- 原審裁判所
- 千葉地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う津波により、東京電力(一審被告東電)が設置・運営する福島第一原子力発電所の1号機から4号機で放射性物質が放出される事故(本件事故)が発生した。これにより福島県内から千葉県内への避難を余儀なくされた住民ら(一審原告ら)が、一審被告東電に対しては主位的に民法709条、予備的に原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)3条1項に基づき、一審被告国に対しては国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償を求めた事案の控訴審である。一審(千葉地裁)は、一審被告東電に対する主位的請求及び一審被告国に対する請求をいずれも棄却し、一審被告東電に対する予備的請求(原賠法3条に基づく請求)の一部を認容した。一審原告ら及び一審被告東電の双方が控訴・附帯控訴した。 【争点】 主な争点は、(1)内閣総理大臣による福島第一原発1号機から4号機の設置許可処分又は変更許可処分の違法性の有無、(2)経済産業大臣による電気事業法40条に基づく技術基準適合命令の発令権限(規制権限)不行使の違法性の有無、(3)規制権限不行使と本件事故との因果関係、(4)一審被告東電の責任(原賠法3条1項の適用と民法709条の適用の可否)、(5)一審原告らの個別損害の範囲及び額である。特に国の責任に関しては、地震調査研究推進本部が平成14年に公表した「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価」(長期評価)に示された見解を規制権限行使の判断の基礎とすべきであったか否かが中心的な争点となった。 【判旨】 裁判所は、まず設置許可処分等の違法性について、当時の科学技術水準や専門技術的知見に照らし、原子力委員会等の調査審議に用いられた具体的審査基準に不合理な点があるとはいえず、調査審議及び判断の過程にも看過し難い過誤・欠落があるとはいえないとして、国賠法上違法とは評価されないと判断した。 他方、経済産業大臣の規制権限不行使については、長期評価に示された見解は科学的知見として相応の信頼性を有しており、これを規制権限行使の要件具備の判断の基礎としないことは著しく合理性を欠くと認定した。そして、長期評価の公表後しかるべき時期に、福島第一原発が津波により全電源喪失という重大な損傷を受けるおそれがあることを認識し得たとし、防潮堤等の設置に加えタービン建屋や重要機器室の水密化等の措置を想定することが可能であったと判断した。長期評価の公表から本件事故までの約8年半の期間に対策を完了できた可能性があり、規制権限不行使と本件事故との間に因果関係が認められるとして、国の責任を認めた(原審を変更)。 一審被告東電の責任については、原賠法が民法の不法行為に関する特別法であるとして民法709条の適用を排除し、原賠法3条1項のみに基づく損害賠償責任を認めた。国と東電は不真正連帯債務の関係に立つとした。損害論では、避難生活に伴う精神的苦痛に対する慰謝料を月額10万円とし、避難所生活の期間は月額2万円を増額するなどの基準を示した上で、一審原告らの類型(居住地域や避難指示区域の区分等)に応じて個別に損害額を認定した。結論として、一部の一審原告らについて原判決を変更して賠償額を増額し、国の責任を新たに認める一方、一部の請求については控訴・附帯控訴を棄却した。