生活保護基準引下げ処分取消等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 大阪府内に居住し生活保護法に基づく生活扶助の支給を受けていた原告ら(50名)が、厚生労働大臣による「生活保護法による保護の基準」(保護基準)の改定(平成25年から3回にわたる段階的引下げ。以下「本件改定」という。)により、所轄の福祉事務所長らから生活扶助の支給額を減額する旨の保護変更決定(本件各決定)を受けたため、本件改定は憲法25条及び生活保護法8条等に違反する違憲・違法なものであるとして、①本件各決定の取消しと、②被告国に対する国家賠償法1条1項に基づく慰謝料各1万円の支払を求めた事案である。本件改定は、生活保護基準部会の検証に基づく年齢・世帯人員・級地間の「ゆがみ調整」と、平成20年から平成23年までの物価下落を反映させる「デフレ調整」を組み合わせたものであった。 【争点】 (1) 本件改定に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の逸脱・濫用があるか (2) 本件各決定が行政手続法14条1項の理由提示を欠くか (3) 国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求権が成立するか 【判旨】 裁判所は、保護基準の改定には厚生労働大臣に専門技術的かつ政策的な裁量権が認められるとしつつ、その裁量判断の適否については、判断の過程及び手続における過誤・欠落の有無等の観点から、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等について審査すべきとした。 その上で、デフレ調整について、第一に、平成20年を物価比較の起算年とした点につき、平成20年は世界的な原油・穀物価格高騰により消費者物価指数が11年ぶりに1%超の上昇となった特異な年であり、同年からの物価下落を考慮すれば下落率が大きくなることは明らかであったにもかかわらず、合理的根拠なくこれを起算年としたことは、統計等との合理的関連性を欠くとした。第二に、改定率の設定につき、消費者物価指数の下落率(−2.35%)ではなく、厚生労働省が独自に算定した「生活扶助相当CPI」による下落率(−4.78%)を用いた点について、生活扶助相当CPIの大幅下落の最大の要因は教養娯楽用耐久財(テレビ、パソコン等)の物価下落であるところ、被保護者世帯は教養娯楽への支出割合が一般世帯より相当低いという消費実態に照らせば、生活扶助相当CPIの値をもって被保護者世帯が物価下落の影響をより強く受けているとはいえず、統計等との合理的関連性及び専門的知見との整合性を欠くとした。 以上から、本件改定は判断の過程及び手続に過誤・欠落があり、裁量権の逸脱・濫用として生活保護法3条、8条2項に違反し違法であるとして、本件各決定を取り消した。他方、国家賠償請求については、決定の取消しや本判決における違法判断により精神的損害は回復されるとして、棄却した。