殺人,現住建造物等放火,銃砲刀剣類所持等取締法違反,窃盗被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、令和元年11月24日、誰でもよいから人を殺害しようと決意し、なたや給油ポンプ、刺身包丁等を購入した上、土地鑑のあった奈良県桜井市内の公園付近で殺害対象を物色した。被告人は、通行中の被害者(当時28歳)を発見し、背格好が自身と似ていたことから殺害を決意。背後からなたで被害者の首付近を数回たたき付けて重傷を負わせた後、自動車で自宅である集合住宅の一室に運び込んだ。被告人は、被害者が既に死亡したと誤信し、死体が被告人自身のものと誤解されることを期待して、被害者の身体上にトイレットペーパーを置いて放火した。火は被告人方のほか隣室等にも燃え移り(焼損面積合計約104.62平方メートル)、いまだ生存していた被害者は焼死した。集合住宅には16名が居住しており、全員が退去を余儀なくされた。被告人はその後福岡県等に約3週間逃亡し、なたと被害者の運転免許証を持って警察署に出頭した。殺人、現住建造物等放火、銃刀法違反、窃盗で起訴された。 【争点】 弁護人は、(1)被告人が犯人であることには合理的疑いがあるとして無罪を主張し、(2)仮に犯人であるとしても、第1行為(なたによる攻撃)と被害者の死亡との間に因果関係がなく殺人未遂罪にとどまると主張した。犯人性については、被告人に犯行の動機がないことや暴力的傾向がないことを根拠として挙げた。因果関係については、被害者の直接の死因が放火による焼死であり、放火時には被告人に殺意がなかったことから、殺人既遂は成立しないと争った。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人が犯人であると認定した。被告人が犯行前に凶器のなたを購入し事件後も所持していたこと、被害者が被告人所有の自動車で現場から被告人方に移動したこと、被告人方が単身居住の場所であったこと、事件後に遠方に逃亡していたこと、被害者の運転免許証を所持していたこと、自供書を作成して出頭したこと等の間接事実を総合し、犯人性を認定した。動機が不明確である点や暴力的傾向がない点については、職場のストレスやパーソナリティ障害の可能性等から犯人でないことを窺わせる事情とはいえないとした。因果関係については、第1行為により被害者は8〜9割の確率で失血死する状態に至っていたこと、第2行為(放火)は当初から犯行計画に組み込まれていたこと、第1行為により被害者が抵抗できなくなったからこそ第2行為が可能になったことから、両行為の結び付きは密接であり、死亡結果は第1行為の危険が現実化したものと評価できるとして殺人既遂罪の成立を認めた。量刑については、本件が無差別殺人であり生命軽視の程度が甚だしいこと、計画的犯行であること、犯行態様が冷酷で残虐であること、放火により集合住宅の住民16名が退去を余儀なくされる甚大な被害が生じたこと等を重視し、死刑の選択はできないものの無期懲役刑が相当であるとして、被告人を無期懲役に処した。