発信者情報開示請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 漫画家である原告が、電気通信事業者である被告(NTTコミュニケーションズ)に対し、P2P方式のファイル共有ソフトウェアであるBitTorrentのネットワーク上で、原告が著作権を有する漫画作品の画像データが送信可能化及び自動公衆送信されたことにより著作権(送信可能化権及び自動公衆送信権)が侵害されたことが明らかであるとして、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、被告が保有する発信者情報(氏名又は名称及び住所)の開示を求めた事案である。原告の訴訟代理人がBitTorrentクライアントソフト(qBittorrent)を用いて調査を行ったところ、被告が管理するIPアドレスが付与された端末から漫画作品の画像データが送信されている状況が確認された。被告から照会を受けた契約者は、身に覚えがないこと、発信時刻には勤務中でインターネット操作ができなかったこと、自身に割り当てられたIPアドレス等が異なること等を理由に関与を否定していた。 【争点】 1. 侵害情報の流通によって原告の権利が侵害されたことが明らかであるか 2. 本件発信者情報は「開示関係役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報」に該当するか 3. 開示を受けるべき正当な理由の有無 【判旨】 請求認容。裁判所は、BitTorrentの仕組みとして、ファイルを受信したユーザーは自動的にピアとして登録され、他のユーザーの要求に応じてファイルを送信する役割を担うことを認定した上で、調査時点でqBittorrentの画面に進捗状況「100%」と表示されていたことから、当該端末には対象ファイルの全部が保存されており、送信可能化権が侵害されたと認定した。また、「D」「16B/秒」の表示から、調査時点で現にファイルが送信(アップロード)されていたと認め、自動公衆送信権の侵害も認めた。契約者の反論については、被告のサービスでは接続の都度異なるIPアドレスが付与される動的アドレス方式であるため、現在割り当てられたIPアドレスが異なることは当然であり、IPアドレスの不一致は関与を否定する根拠にならないと判断した。また、BitTorrentではファイル共有に現に端末を操作する必要がないため、勤務中でインターネット操作ができなかったとの主張も否定の根拠にならないとした。さらに、仮に原告の著作権が共有著作権であったとしても、少なくとも原告の持分が侵害されるとして、権利侵害の明白性に影響しないと判示した。