不当利得返還請求事件
判決データ
- 事件番号
- 令和2受763
- 事件名
- 不当利得返還請求事件
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 裁判年月日
- 2021年3月2日
- 裁判種別・結果
- 判決・破棄自判
- 裁判官
- 林道晴、戸倉三郎、林景一、宮崎裕子、宇賀克也
- 原審裁判所
- 東京高等裁判所
AI概要
【事案の概要】 宇都宮市は、事業系生ごみの再資源化を目的として、株式会社エコシティ宇都宮(以下「エコシティ」)を事業主体とするバイオマス利活用地区計画を策定した。この計画に基づき、関東農政局長は被上告人(栃木県)に対し、バイオマスの環づくり交付金として合計約2億6100万円の交付決定をした。交付決定には、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(適正化法)7条3項により、間接交付事業者が取得した財産の処分について関東農政局長の事前承認を要する旨の条件が付されていた。補助金は国から県、県から市、市からエコシティへと順次交付され、エコシティはこれを主要財源として堆肥化施設を整備した。ところが、エコシティは平成20年に操業を停止し、施設は担保不動産競売により売却された。この財産処分に際し、県は関東農政局長に承認を申請し、局長は国庫補助金相当額の納付を条件として承認した。県はこの条件に従い約1億9600万円を国に納付した。本件は、県が、上記承認は法令上の根拠を欠き無効であるとして、国に対し不当利得返還請求権に基づき同額の返還を求めた事案である。 【争点】 関東農政局長による財産処分の承認が適正化法22条を根拠としてなされたところ、同条は補助事業者等による財産処分を規律するものであり、間接補助事業者等であるエコシティの財産処分には適用されない。そこで、いわゆる違法行為の転換の理論により、同承認を適正化法7条3項に基づく交付決定条件を根拠とするものとして有効と扱えるかが争われた。また、担保権の実行による所有権移転が交付決定条件における承認の対象となるかも問題となった。 【判旨】 最高裁は、原判決を破棄し、県の請求を棄却した。まず、担保権設定の承認は担保権実行時の目的外使用まで含むものではなく、目的外使用について改めて承認を得る必要があったとした。そして、本件承認は施設の「目的外使用(補助事業を中止する場合)」を対象としたものと解されるとした。次に、違法行為の転換について、適正化法22条に基づく承認と7条3項に基づく承認は、補助金の交付目的が達成し得なくなる事態を防止するという目的を共通にすること、転換により県に不利益が生じないこと、根拠法条の誤りを知っていれば7条3項に基づく承認をしなかったとは考えられないことを指摘し、本件承認は7条3項による交付決定条件に基づくものとして適法であると判断した。補助金相当額の納付を条件とする附款も有効であり、県の納付は法律上の原因を欠くものではないとした。 【補足意見】 宇賀克也裁判官は、違法行為の転換が認められる要件として、(1)転換前後の行政行為の目的の共通性、(2)転換後の法効果が関係人にとって不利益にならないこと、(3)瑕疵を知っていれば転換後の行為をしなかったとはいえないこと、の3点を整理した。過去の最高裁判例を検討し、転換を認めた判例はこれら3要件を全て満たし、否定した判例はいずれかを欠く事案であったと指摘した。さらに、これらは必要条件であって十分条件ではなく、行政審判手続との関係や二重効果的行政処分における第三者の権利利益への影響など、慎重な検討を要する場面がある旨を付言した。