被告人甲に対する傷害致死,監禁,死体遺棄,恐喝未遂,恐喝被告事件,被告人乙に対する傷害致死,監禁,死体遺棄,恐喝被告事件
判決データ
- 事件番号
- 令和1わ1408
- 事件名
- 被告人甲に対する傷害致死,監禁,死体遺棄,恐喝未遂,恐喝被告事件,被告人乙に対する傷害致死,監禁,死体遺棄,恐喝被告事件
- 裁判所
- 福岡地方裁判所
- 裁判年月日
- 2021年3月2日
AI概要
【事案の概要】 被告人甲は、被害者である己(当時36歳)やその夫から繰り返し金銭を搾取していたところ、令和元年6月頃以降、己を家族から引き離して被告人両名方に同居させ、衣食住を管理して行動を支配するようになった。己は、高カロリーの食事を強要されて体重を急増させられ、毎日同じ服を着せられて入浴もさせてもらえないなど、人としての尊厳を踏みにじられる生活を強いられた。被告人甲と交際相手の被告人乙は、令和元年9月下旬頃から約1か月間にわたり、己に対してバタフライナイフを突き刺す、木刀で臀部を多数回殴打する、膝を踏みつけるなどの激しい暴行を日常的・継続的に加え、同年10月19日から20日にかけて、己を外傷性ショックにより死亡させた。被告人甲は、このほかにも、己やその知人であるCらに対する恐喝事件を複数起こしており、被害総額は合計489万5000円に及んだ。なお、検察官は被告人両名が己の遺体を車で運搬した行為を死体遺棄として起訴した。 【争点】 本件では主に以下の点が争われた。第一に、傷害致死について、被告人甲の弁護人は甲の暴行は軽微なもので死因となった激しい暴行は行っておらず乙との共謀もないと主張し、被告人乙の弁護人は乙は一切暴行をしていないとして無罪を主張した。第二に、監禁について、己が被告人両名方から脱出することが著しく困難であったか、共謀があったかが争われた。第三に、恐喝について、被告人甲の弁護人は金銭は借金の返済等として受領したもので脅し取ったものではないと主張した。第四に、死体遺棄について、己の遺体を車に乗せて移動した行為が遺棄に該当するかが争われた。裁判所は、被告人乙が知人や被告人甲の息子に送った「膝の皿を砕いた」「木刀でフルスイング」等のLINEメッセージや、車内での口裏合わせの録音内容等の客観的証拠に基づき、被告人両名がそれぞれ暴行を加えた事実と共謀の存在を認定した。監禁についても、暴行等により逃走困難な心理状態に陥らせたと認定した。他方、死体遺棄については、被告人らは当初から通報を前提に行動しており、遺体を隠す積極的行為もなかったとして、遺棄には当たらないと判断し無罪とした。 【判旨(量刑)】 裁判所は、約1か月間にわたり日常的・継続的に激しい暴行を加えて被害者を死に至らしめた行為は、凶器を用いた共犯による傷害致死の同種事案の中でも最も重い部類に属すると評価した。犯行動機は被害者を服従させて金銭を搾取するという私利私欲であり、暴行を楽しんでいた様子も窺われ、酌むべき事情は全くないとした。被告人甲には主導的・中心的役割と多数の悪質な恐喝事件の併合を考慮し、被告人乙についても被害者死亡の直接原因となる激しい暴行を行った責任は大変重いとした上で、被告人甲を懲役22年(求刑懲役23年)、被告人乙を傷害致死等の罪について懲役15年(求刑懲役16年)・恐喝の余罪について懲役6月(求刑懲役1年)に処した。死体遺棄については被告人両名を無罪とした。