傷害,傷害致死,暴行,強要
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、千葉県野田市内で妻及び長女(被害児、当時9〜10歳)らと生活する中で、平成29年11月上旬頃から平成31年1月24日までの約1年2か月にわたり、長女に対して断続的に虐待を繰り返した。具体的には、頭部を殴るなどの暴行(第1)、大便を手に持たせて撮影するという屈辱的行為の強要(第2)、両手首をつかんで引きずり床に打ち付けるなどして顔面打撲・胸骨骨折の傷害を負わせた行為(第3)、虐待を制止しようとした妻への暴行(第4)、浴室に長時間立たせる強要(第5)、そして平成31年1月22日から24日にかけて丸2日間食事を与えず、睡眠も取らせないまま、真冬の暖房のない浴室に放置し、冷水を浴びせかけるなどの虐待を続け、ケトアシドーシスに基づくショック等により死亡させた傷害致死(第6)の各事実が認定された。原審は被告人を懲役16年に処した。被告人が控訴し、訴訟手続の法令違反、事実誤認及び量刑不当を主張した。 【争点】 控訴審における主な争点は、(1)被害児が生前に作成したいじめアンケート及び担任教諭らの伝聞証言の証拠能力、(2)被害児の供述の信用性に基づく暴行事実の認定の当否、(3)妻Cの原審証言の信用性に基づく傷害及び傷害致死事実の認定の当否、(4)懲役16年という量刑の相当性であった。 【判旨(量刑)】 東京高裁は、控訴を棄却した。証拠能力の点については、原審弁護人がアンケートを証拠とすることに同意しており、伝聞証言についても異議申立てがないまま尋問が終了していることから、刑訴法326条1項により証拠能力が認められるとした。被害児の供述の信用性については、アンケート作成の経緯や供述内容の具体性・一貫性、客観的証拠との整合性から信用性を肯定した。妻Cの証言についても、体験者でなければ語り得ない具体的内容を含み、客観的証拠や医学的所見とも整合するとしてその信用性を認めた。量刑については、本件傷害致死の犯行態様が異常なまでに陰惨でむごたらしいこと、1年2か月余りにわたり虐待を常態化・エスカレートさせたこと、児童相談所や親族による救いの手を徹底的に排除して被害児を孤立無援に追い込んだこと、被告人の独善的な支配欲に基づく意思決定に酌量の余地がないことなどから、児童虐待による傷害致死の事案の中でも悪質性が並外れて際立っており、懲役16年とした原判決の量刑は不当に重いとはいえないと判断した。