特許権侵害差止等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、発明の名称を「美容器」とする特許(特許第6121026号)の特許権者である被控訴人が、控訴人の製造販売する美容ローラ(被告各製品)が本件特許の技術的範囲に属し、特許権を侵害するとして、製造・販売等の差止め、製品・金型の廃棄、及び損害賠償金5000万円の支払を求めた事案の控訴審である。本件特許は、二股に分かれた先端部にローラが取り付けられた美容器に関し、ハンドルを上下又は左右に分割するのではなく、ハンドル本体に凹部を設けてハンドルカバーで覆う構成を採用することにより、成形精度・強度の維持と組立作業性の向上を図ったものである。原審(東京地裁)は、旧被告製品については文言侵害を、新被告製品については均等侵害を認め、差止め・廃棄及び約2889万円の損害賠償を認容した。控訴人がこれを不服として控訴した。 【争点】 主な争点は、(1)「棒状のハンドル本体」の意義(湾曲したハンドルを含むか)、(2)「凹部」の位置的限定の有無、(3)「軸孔に挿通された」の意義(貫通が必要か)、(4)新被告製品の均等侵害(軸孔と凹部が連通しない構成の第1要件充足性)、(5)サポート要件・明確性要件・分割要件の各無効理由、(6)損害額の推定覆滅事由の有無である。 【判旨】 知財高裁は、控訴を棄却し原判決を維持した。争点(1)について、「棒状」とは手に把持できる細長い形状であれば足り、直線状に限定されないと判断した。明細書の実施例は直線状のハンドルを示すが、課題解決原理の観点から形状の限定は不要であるとした。争点(2)について、「凹部」はハンドル本体の表面から内方に窪んだ穴部を意味し、中央部に限定されないとした。争点(3)について、「挿通」は軸孔を貫通する場合に限らず、軸孔の反対側端面に至るまで深く差し込まれた状態も含むと解した。争点(4)について、「連通する軸孔」(構成要件C)は本件発明の本質的部分ではなく、均等の第1要件を充足するとした。争点(5)について、サポート要件、明確性要件、分割要件のいずれも充足し、無効理由はないとした。特にサポート要件について、応力集中に関する技術常識を踏まえ、接合線が短い本件発明の構成が強度維持・成形精度確保・組立容易性に寄与することは当業者が認識できるとした。争点(6)について、マイクロカレントの有無や控訴人の営業努力は推定覆滅事由に当たらないとし、本件発明は美容器の基本構造に関わるものとして寄与率による覆滅も否定した。