AI概要
【事案の概要】 原告株式会社IHI機械システム及び原告株式会社IHIは、発明の名称を「真空洗浄装置および真空洗浄方法」とする2件の特許権(特許第6043888号・特許第5976858号)を共有していた。真空洗浄装置とは、減圧した洗浄室内に洗浄剤を気化させ、ワーク表面に凝縮させることで油脂を溶解・除去する装置である。本件各特許の技術は、従来の真空ポンプによる減圧乾燥では長時間を要するという課題を解決するため、洗浄室よりも低温に保持された凝縮室を洗浄室と連通させることで蒸気を急速に凝縮・移動させ、乾燥時間を大幅に短縮するものであった。 原告らは、被告高砂工業株式会社が製造販売する真空洗浄機「TVD型」が本件各特許の技術的範囲に属すると主張し、特許法100条に基づく差止め・廃棄、及び民法709条に基づく損害賠償(各原告につき4億4550万円)を求めた。 【争点】 主な争点は、(1)被告製品のL型真空弁及び水冷バッフルが本件各発明の「凝縮室」に該当するか、被告製品が「洗浄室を凝縮室と連通させてワークを乾燥させる」との構成を備えるか(構成要件充足性)、(2)先行文献(米国特許第6004403号公報等)に基づく進歩性欠如、分割要件違反、実施可能要件違反、サポート要件違反の各無効理由の有無、(3)損害額であった。被告は、本件各発明の乾燥工程は凝縮室との連通「のみ」による乾燥を意味し真空ポンプの使用を排除していると主張し、被告製品は真空ポンプと凝縮作用の複合一体的作用により乾燥を実現する別技術であると争った。 【判旨】 裁判所は、被告製品が本件発明2の技術的範囲に属し、無効理由もないと判断した。 構成要件充足性について、被告製品のL型真空弁及び水冷バッフルは蒸気を凝縮させるに十分な容量と水冷能力を有しており「凝縮室」に該当すると認定した。構成要件2Gの「凝縮室と連通させてワークを乾燥させる」との文言について、「連通させることのみによって」とは規定されておらず、明細書にも真空ポンプの使用を禁じる記載はないとして、真空ポンプの付加的併用を排除するものではないと判断した。出願経過における意見書の「連通させることのみによって」との記載についても、従来技術との対比で乾燥メカニズムを明確にする趣旨に過ぎず、包袋禁反言には当たらないとした。シミュレーション及び実験結果から、被告製品の急速乾燥は水冷バッフルによる凝縮作用が支配的であり、真空ポンプの作用は付加的なものにすぎないと認定した。 無効理由については、先行文献との相違点(凝縮室を洗浄室と独立して減圧・保持する構成等)が容易想到でないとして進歩性を肯定し、分割要件違反、実施可能要件違反、サポート要件違反のいずれも否定した。 損害額について、特許法102条2項に基づき被告の限界利益を算定した上、本件特許が装置全体ではなく乾燥工程に関するものであること等を考慮し、5割の推定覆滅を認めた。弁護士費用及び消費税を加算し、原告らの損害合計を各1億9074万2387円と認定した。