謝罪広告掲載等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、朝日新聞を発行する原告(朝日新聞社)が、森友学園問題及び加計学園問題(判決文では「D問題」)に関する原告の一連の報道を批判的に検証する書籍「徹底検証「森友・加計事件」朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪」を執筆した被告Y(文芸評論家)及びこれを出版した被告飛鳥新社に対し、同書籍によって名誉を毀損されたと主張して、民法723条に基づく謝罪広告の掲載と、民法709条に基づく損害賠償5000万円の支払を求めた事案である。同書籍は、原告が森友問題及び加計問題について「スクープをねつ造して虚偽の事実ないし疑惑を報道した」「安倍首相らの関与がないことを知りながら疑惑を創作した」などと記述し、原告の報道を「戦後最大級の報道犯罪」と位置付けるものであった。書籍の発行部数は約9万5000部に及び、他紙にも広告が掲載された。被告らは、本件訴えがいわゆるスラップ訴訟(批判的言論を封殺するための濫訴)に該当すると主張して訴えの却下を求めるとともに、書籍の記述は公共の利害に関する事実に係る意見ないし論評であり、その前提事実は真実であると主張した。 【争点】 主な争点は、(1)本件訴えが訴権の濫用(スラップ訴訟)に当たるか、(2)書籍の各記述が原告の社会的評価を低下させるか、(3)各記述の摘示事実又は前提事実の真実性及び相当性、(4)謝罪広告の要否及び損害額の4点である。特に、書籍中の「ねつ造」「虚報」等の表現が事実の摘示か意見・論評の表明かという点と、原告が疑惑に根拠がないことを認識しながら報道したという摘示事実の真実性が中心的な争点となった。 【判旨】 裁判所は、書籍中の13の記述、表題及び献辞について個別に検討し、本件記述9を除く全ての記述について原告の社会的評価を低下させるものと認定した。「ねつ造」「虚報」という表現は故意による行為を含意するものであり、書籍全体の文脈からも事実の摘示に当たると判断した。被告らが主張する意見・論評の表明であるとの抗弁については、各記述が証拠等をもってその存否を決することが可能な事項を主張するものである以上、事実の摘示であることは否定できないとした。真実性の検討においては、森友問題について国有地売却価額の不透明さや安倍首相夫人と森友学園との関係等、加計問題について「官邸の最高レベル」「総理のご意向」等の記載のある文科省文書の存在等を踏まえ、報道当時において疑惑に根拠がないことを原告が認識していたとは認められないとして、摘示事実の真実性を否定した。スラップ訴訟の主張については、請求が一部認容されること等から訴権の濫用には当たらないとした。損害額については、書籍と朝日新聞の想定読者層が異なること、原告の信用に重大な影響があったとまでは認められないこと等を考慮し、謝罪広告の掲載請求を棄却した上で、200万円の損害賠償(請求額の25分の1)のみを認容した。