発信者情報開示請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 控訴人(一審原告)は、メールマガジンを創作・配信しており、その内容である著作物の著作権者である。被控訴人(一審被告)の株式会社サイバーエージェントは、「Ameba」の総称で各種サービスを提供しており、その中にはウェブサイト等を無料で作成できる「Ameba Ownd」というサービスが含まれている。同サービスを利用して開設されたウェブサイトに、控訴人のメールマガジンと同一内容の記事がA4判688頁にも及ぶ大量に無断転載され、控訴人の著作権(複製権及び公衆送信権)が侵害された。控訴人は、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、被控訴人に対し、当該ウェブサイトを開設した会員が登録時に用いた電子メールアドレス(発信者情報)の開示を請求した。原審(東京地裁)は請求を棄却したため、控訴人が控訴した。 【争点】 主な争点は、会員登録時に入力された電子メールアドレスが、プロバイダ責任制限法4条1項にいう「発信者情報」に該当するか否かである。具体的には、(1)登録手続者と実際に著作権侵害の投稿をした「発信者」が同一人物といえるか、(2)登録された電子メールアドレスが真に発信者本人のものといえるかが問題となった。被控訴人は、本件サービスが氏名・住所の登録を要しない無償サービスであること、フリーメールによる登録が可能で本人確認のレベルが高くないこと、ID・パスワードの譲渡の可能性、複数人による管理機能の存在等を挙げ、登録された電子メールアドレスが発信者本人のものとは限らないと主張した。 【判旨】 控訴認容(原判決取消し、開示請求認容)。知財高裁は、次の事情を総合考慮し、登録手続者・会員・投稿者はいずれも同一人物と推認するのが合理的であると判断した。第一に、本件サービスは登録時に設定したパスワード等を入力しなければ利用できないため、登録手続者とサービス利用者は通常同一人と考えられること。第二に、利用規約上、虚偽情報の登録や認証情報の第三者への譲渡等が禁止され、違反には利用停止・退会処分等の制裁が定められていることから、登録者が自ら通常使用する電子メールアドレスを入力し、認証情報を第三者に譲渡しないことが推認されること。第三に、サイト開設後の大量の投稿内容からサイト運営者に変更があったとは考え難いこと。第四に、被控訴人からの意見照会メールに何ら返信がないことは、開示を拒絶する合理的理由を主張できないことを推認させること。被控訴人の主張する虚偽メールアドレスの登録やID譲渡の可能性等は、いずれも抽象的な可能性に過ぎず、具体的事情に基づく上記認定判断を左右しないとした。