特例補装具費不支給処分取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 筋ジストロフィーに罹患し、四肢・体幹機能障害1級の身体障害者である原告は、電動車椅子を利用して大学のマンガ学部に通学していた。原告が京都市に対し、障害者総合支援法に基づき新たな電動車椅子の購入費用について補装具費の支給を申請したところ、京都市(被告)は、申請に係る費用のうち、(1)座位保持装置としての頭頸部加算及びネックサポート金具の加算、(2)座面の昇降機能(リフト機能)に係る特例補装具費を不支給とする決定をした。被告は、(1)については電動車椅子の付属品であるヘッドサポートと機能が重複すること、(2)については医学的必要性が認められず就学上の支障もないことを理由とした。原告は、この一部不支給処分の取消し及び特例補装具費の支給決定の義務付けを求めて出訴した。なお、特例補装具費とは、厚労省基準の別表に定められた名称・型式等によることができない補装具について、障害の現症や生活環境等を特に考慮して市町村が支給を決定する費用である。 【争点】 (1) 訴えの利益の有無(原告が変更後見積書を提出したことで申請内容を補正したといえるか)、(2) 頭頸部加算及びネックサポート金具の費用支給を認めなかった判断に裁量の逸脱・濫用があるか、(3) リフト機能を必要とする「真にやむを得ない事情」がないとした判断に裁量の逸脱・濫用があるか、(4) 理由提示の不備の有無、(5) 特例補装具費の支給義務付けの可否。 【判旨】 一部認容・一部棄却・一部却下。裁判所は、まず訴えの利益について、原告の母が変更後見積書を提出したのは、不服申立てで争うことを留保しつつ認められた部分の支給手続を速やかに進める目的にすぎず、申請内容の補正・変更には当たらないとして、本件支給決定は一部不支給決定であり訴えの利益があると判断した。争点(2)の頭頸部加算等については、ヘッドサポートマルチタイプ調整式はオーダーメイドで製作される頭頸部支持機能を有する部品であり、座位保持装置としての頭頸部加算及びネックサポート金具と機能が重複すると判断したことに不合理はなく、基準額を上回る特例補装具費の支給も認めていたことから、裁量の逸脱・濫用はないとした。争点(3)のリフト機能については、原告の障害の状態(頭部を筋力でコントロールできず見上げる動作ができない、腕を支えなしで持ち上げられない等)を踏まえると、リフト機能は単なる利便性向上にとどまらず日常生活に必要不可欠であること、無理な姿勢での動作の蓄積により側彎形成が進むなど医学的観点からも必要性があること、美術系大学で絵を描く実習が中心的な学習内容であるという就学上の特殊事情からも必要性が高かったことを認定し、被告がこれらの考慮要素を適切に考慮せずになした不支給決定は裁量権の逸脱・濫用に当たり違法であるとして取消しを命じ、リフト機能に係る特例補装具費の支給決定を義務付けた。