AI概要
【事案の概要】 生命保険の募集に関する業務等を目的とする原告会社及びその代表者である原告Aが、原告会社の元従業員である被告B、同C及び同D並びに業務委託先であった被告Eに対し、被告らが在職中に被告会社を設立した上、原告Aに対し継続的に恐喝行為を行って保険契約の移管合意を強要し、顧客名簿等を搭載したパソコンを含む備品を窃取し、取引先保険会社に対し信用毀損する告知を行った等と主張して、不正競争防止法4条及び民法709条等に基づき、原告会社につき損害賠償金4235万円、原告Aにつき損害賠償金約576万円の連帯支払を求めた事案(本訴)である。これに対し、被告Bらは本訴が不当訴訟であるとして各110万円の損害賠償を求め(第1反訴)、被告Cは原告Aに対する貸金残金約402万円の返還等を求め、被告Eは原告会社との業務委託契約に基づく未払報酬約909万円の支払を求めた(第2反訴)。背景として、原告Aが従業員らに消費者金融からの借入れを依頼して返済を怠り、高級外車購入のため被告Bを無断で連帯保証人とする契約書を作成するなどしたため、被告らが原告Aに不信感を抱いて退職し被告会社を設立したという事情がある。 【争点】 (1) 被告らによる営業秘密不正取得行為の成否(顧客情報等の秘密管理性)、(2) 被告Bによる信用毀損行為の成否(オートクレジット契約書偽造の告知が虚偽の事実に当たるか)、(3) 被告らによる脅迫等の行為・窃取行為の有無、(4) 被告Bらの不当訴訟の主張(本訴提起の違法性)、(5) 原告Aの被告Cに対する貸金の既弁済額(軍資金等が弁済に当たるか)、(6) 被告Eと原告会社間の業務委託契約の存否・内容(契約当事者、コミッション報酬の割合) 【判旨】 原告らの請求をいずれも棄却し、被告C及び被告Eの反訴請求を一部認容した。まず、営業秘密不正取得について、顧客情報の記載された申込書控は営業時間中施錠されていない書棚で従業員が閲覧可能な状態にあり、パソコン内の電磁的記録も各担当者がアクセスできる状態であったことから、秘密管理性の要件を欠くとした。信用毀損については、オートクレジット契約書の連帯保証人欄の筆跡が原告Aのものであること、被告Bが連帯保証を承諾する合理的理由がないこと等から、同契約書は原告Aが被告Bに無断で作成した偽造文書と認定し、被告Bの告知内容は虚偽の事実に当たらないとした。脅迫・窃取行為については、原告Aが従業員への借金返済の懈怠やオートクレジット契約書偽造等の重大な問題を抱えていた経緯に鑑み、保険契約の移管及び備品の持出しはいずれも原告Aの了解の下でなされたと評価し、脅迫・窃取行為を認めなかった。被告Cの貸金返還請求については、軍資金及びインセンティブ報酬分配金は弁済とは異なる趣旨の支払であると認定し、貸金残額301万0782円の支払を命じた。被告Eの業務委託契約については、契約当事者は訴外イノベーションではなく原告会社であると認定した上、コミッション報酬の割合は当初合意の80%のままであるとし、未払報酬571万1449円の支払を命じた。