損害賠償請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 平成26年1月15日午前8時頃、海上自衛隊の輸送艦「おおすみ」(全長178メートル)と、亡Fが船長を務めるプレジャーボート「とびうお」(全長7.6メートル)が、広島県大竹市阿多田島東方沖合において衝突し、「とびうお」が転覆した結果、乗船していた亡F及び亡Gが溺水により死亡し、訴外乗員1名が負傷する事故が発生した。本件は、亡Fの内縁の妻であった亡Aの訴訟承継人B、亡Gの妻の相続人等である原告C及び原告D、並びに乗船していた原告Eが、本件事故は「おおすみ」の艦長らの違法な操艦行為によって発生したと主張して、国家賠償法1条1項に基づき、被告(国)に対し、合計約5445万円の損害賠償を求めた事案である。 【争点】 (1) 追越し船としての避航義務違反の有無(「おおすみ」が海上衝突予防法13条の追越し船に該当し、「とびうお」を避航すべき義務を負っていたか)、(2) 新たな衝突の危険を生じさせた船舶としての避航義務違反の有無(「おおすみ」の変針・定針定速により相互作用による衝突の危険が生じたか)、(3) 横切り船(保持船)としての警告信号吹鳴義務違反及び最善の協力動作義務違反の有無、(4) 「とびうお」を転覆させないための操艦義務違反の有無(面舵一杯ではなく取舵一杯を取るべきであったか)。 【判旨】 請求棄却。争点(1)につき、裁判所は、「とびうお」の平均針路は概ね201度であったと認定した上で、「おおすみ」が「とびうお」の正横後22度30分を超える後方の位置に入った時間帯があったとしても、両船が定針定速で航行した場合には「とびうお」は「おおすみ」の艦首前方を通過する関係にあったことから、「おおすみ」が「とびうお」に追い付きその前方に出る状況にあったとはいえず、追越し船には該当しないと判断した。争点(2)につき、衝突の原因は相互作用ではなく、午前7時59分30秒頃の「とびうお」の右転であると認定し、「おおすみ」が定針定速となった午前7時57分2秒頃には両船の距離が約670メートルあり、衝突の危険は生じていなかったとした。争点(3)につき、両船が定針定速で航行すれば衝突しなかったのであるから、客観的に衝突の蓋然性があったとはいえず、横切り船の航法の適用はないとした。争点(4)につき、面舵一杯を指示した時点では「とびうお」は「おおすみ」の転心よりも前方にいたため、その後に「とびうお」が左舷中央部付近まで方位を落とすことを予見して取舵一杯を指示することは不可能であったと判断し、操艦義務違反を否定した。