特許権侵害行為差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、「半導体集積回路装置及びその製造方法」に関する特許権(特許第3593079号)を有する原告(合同会社IP Bridge1号)が、被告(マイクロンジャパン株式会社)に対し、被告が輸入・譲渡するSDRAM製品(MT40A512M16LYシリーズ等5製品)が本件特許の請求項1ないし3、5ないし8の各発明の技術的範囲に属すると主張して、特許法100条1項及び2項に基づく被告製品の輸入・譲渡等の差止め及び廃棄を求めるとともに、主位的に民法709条に基づく損害賠償金(一部請求)1億円及び遅延損害金の支払を、予備的に民法703条に基づく不当利得金(一部請求)1億円及び遅延利息の支払を求めた事案である。 本件特許は、DRAM等の微細な繰り返しパターンを有する素子群が混載された半導体集積回路装置において、マスクパターンレイアウトの違いに起因する寸法ばらつきを防止するため、回路パターンの配置領域にダミーパターンを挿入し、単位面積当たりの周縁長を所定の範囲に設定する技術に関するものである。原告は、本件発明の「半導体集積回路装置」にはDRAMも含まれ、DRAM内のメモリセルが「メモリ回路」「素子群」に該当すると主張した。 【争点】 1. 被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか(争点1) (1) 被告製品(SDRAM)が「半導体集積回路装置」「メモリ回路」「素子群」を充足するか(争点1-1) (2) 被告製品が「同一の異方性ドライエッチング工程によって形成されている」等の構成要件を充足するか(争点1-2) 2. 原告の損害・利得額(争点2) 【判旨】 裁判所は、争点1-1について検討し、原告の請求をいずれも棄却した。 裁判所は、本件明細書の記載を詳細に検討し、本件発明はシステムLSIを念頭に置いたものであり、メモリであるDRAMは「半導体集積回路装置」に含まれないと判断した。その理由として、(1)本件明細書の従来技術の課題として、DRAM搭載品種と非搭載品種とを比較した上で課題が生ずることが記載されており、DRAMその他の回路が搭載されるシステムLSIを念頭に検討がされていること、(2)メモリであるDRAMについての固有の課題やそれに関する知見は記載されておらず、システムLSIとは技術的内容が異なるDRAMに同様の知見を適用できる旨の示唆もないこと、(3)実施例においても「DRAM等」が「混載」ないし「搭載」された「半導体集積回路装置」としてシステムLSIの記載があるのみで、メモリを「半導体集積回路装置」とする実施例の記載はないこと、(4)汎用DRAM全体の単位面積当たりのゲート電極周縁長を規格範囲の上限の基準としており、汎用DRAM内部の構造は課題とされていないことを挙げた。 原告は、本件発明の課題解決手段が「特定回路」に着目したものであり、DRAM内のメモリセルも「特定回路」に含まれると主張したが、裁判所は、明細書の実施例はDRAM等をシステムLSIにおける「特定回路」とするものにすぎず、DRAM内のメモリセルが該当する旨の示唆はないとしてこれを退けた。以上から、被告製品はDRAMの一種であるSDRAMであるため「半導体集積回路装置」に該当せず、本件各発明の技術的範囲に属しないとして、請求を棄却した。