AI概要
【事案の概要】 本件は、商標法50条に基づく商標登録取消審判についての審決取消訴訟である。被告(特定非営利活動法人高砂物産協会)は、「松右衛門帆」の文字等からなる商標(登録第5689999号)の商標権者であり、指定商品は「工楽松右衛門の創製した帆布を用いたかばん類」等であった。原告ら(工樂松右衛門の子孫)は、被告や通常使用権者が販売する商品に使用されている帆布は「工楽松右衛門の創製した帆布」に該当しないとして、商標登録の取消しを求める審判を請求したが、特許庁は「審判の請求は成り立たない」との審決をした。原告らは、「工楽松右衛門の創製した帆布」といえるためには、布の両端1寸ほどを縦糸1本横糸2本で織り、それ以外を縦糸2本横糸2本で織っていること(特徴(1))、及び幅が2尺5寸(約75cm)であること(特徴(2))が必要であり、これらを備えない被告の商品は指定商品に該当しないと主張して、審決の取消しを求めた。 【争点】 (1) 審決に判断遺脱及び理由不備があるか(取消事由1)。 (2) 被告の商品が指定商品「工楽松右衛門の創製した帆布を用いたかばん類」に該当するか(取消事由2)。具体的には、「工楽松右衛門の創製した帆布」の意義をどのように解釈すべきか、原告らが主張する特徴(1)(2)を備えることが必要か、が争われた。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、まず取消事由1について、審決は被告の商品が指定商品に含まれるか否かについて実質的な判断を示しており、理由不備や判断遺脱はないとした。取消事由2については、各辞典(広辞苑、日本国語大辞典、大辞林)の記載から、「松右衛門帆」は「工楽松右衛門の創製した帆布」と同義であり、「太い綿糸で織られた幅広の厚手の帆布」程度の認識が取引者・需要者の間にあったと認定した。そして、松右衛門帆が船の帆として使用されていた当時から規格にはバラつきがあったこと、帆船の減少に伴い松右衛門帆の意義が不明確となっていたところ、被告が神戸大学海事博物館所蔵の帆布を専門家の協力のもと調査・復元して製造販売を開始し、その結果「太い木綿糸を用い、太さの違う経糸と緯糸を2本引き揃えて織った厚く丈夫な布地」との認識が取引者・需要者に広まっていたことを認定した。以上から、原告らが主張する特徴(1)(2)が指定商品の要件とは認められず、被告の商品(本件布地を用いたかばん)は「工楽松右衛門の創製した帆布を用いたかばん類」に該当すると判断し、本件商標は要証期間中に指定商品について使用されていたとして、審決の判断を維持した。