AI概要
【事案の概要】 熱絶縁工事業を営む原告会社(株式会社ビーシージェー)の元代表取締役である被告Aが、原告を退任して競合会社である被告会社(千代田紡織株式会社)に転職した際、原告の社内で使用していた防災工事の見積作成・管理ソフト(本件見積ソフト等)をUSBメモリにコピーして持ち出した。原告は、被告Aが本件見積ソフト等を被告会社で使用・開示したことが不正競争防止法2条1項7号の営業秘密の不正使用に当たるとして、被告Aに対し不競法4条に基づく損害賠償を、被告会社に対し不競法4条・民法719条に基づく損害賠償をそれぞれ請求した(第1事件・第2事件本訴)。また、原告は、被告Aが在任中に転職準備や取引先への引き抜き工作等を行ったとして、会社法423条1項に基づく任務懈怠による損害賠償も請求した。請求額は、取引先喪失による逸失利益2958万3000円及び役員報酬相当額455万円の合計3413万3000円である。他方、被告会社は、原告との間で下請工事契約が成立していたとして、未払請負代金303万7009円の支払を求める反訴を提起した(第2事件反訴)。 【争点】 1. 本件見積ソフト等が不正競争防止法上の「営業秘密」に該当するか(秘密管理性・有用性・非公知性)、及び被告らによる営業秘密の使用又は開示行為の有無 2. 被告Aの代表取締役としての任務懈怠の有無(転職準備、取引先への働きかけ、建設業許可取得の準備等) 3. 原告の損害額 4. 原告と被告会社との間の下請工事契約の成否及びその内容 5. 相当な請負代金額 【判旨】 裁判所は、原告の請求及び被告会社の反訴請求をいずれも棄却した。争点1について、本件見積ソフト等は市販ソフトを利用して作成されたものであり、社内のコンピュータで共有され、従業員であれば特段の制限なく自由にアクセスできる状態にあったこと、社外秘として持出しを厳禁し従業員に周知していた事情を認める客観的証拠がないことから、秘密管理性の要件を欠くと判断した。また、被告Aの持出し行為は退任前に受注済みの完成工事の精算書送付目的にすぎず、図利加害目的も認められないとした。争点2について、被告Aによる被告会社への訪問は取引先訪問として不自然でなく、接待に関する任務懈怠の具体的事実を認める証拠もないとした。原告が取引先から受注を得られなくなったのは被告Aの行為とは無関係の原因(取引先が原告による工事放棄と認識した状況)によるものとうかがわれるとして、任務懈怠を否定した。争点4について、本件各工事は被告Aらが被告会社への移籍前後を通じて原告の業務を完遂する一環として担当したものにすぎず、下請工事契約の成立は認められないとした。