運転免許取消処分取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、普通自動車の運転免許を有するものの準中型自動車の免許は有していない原告(当時23歳)が、勤務先の生活協同組合Aの配送業務中に準中型自動車(日産アトラス、車両総重量3505kg)を運転していたところ、物損事故を起こして無免許運転が発覚し、大阪府公安委員会から免許取消処分及び欠格期間2年間の処分を受けたことにつき、その取消しを求めた行政訴訟である。 原告は平成30年3月に道路交通法改正後の普通免許を取得しており、同改正により車両総重量3500kg以上7500kg未満の車両が新たに「準中型自動車」に区分されたことは認識していた。しかし、勤務先への就職面接時に免許証を提示して確認を受け、副支所長Cから「日産製の車両は運転できるから大丈夫」と言われ、研修中にも先輩従業員2名から同旨の説明を受けた上で、Cから本件車両を割り当てられて運転を指示された。原告はこれらのやり取りから本件車両を普通自動車と思い込み、自動車検査証で車両総重量を確認することなく、令和元年6月下旬から約2か月間、週5日程度にわたり本件車両を運転して配送業務に従事していた。なお、本件車両の車両総重量3505kgは普通自動車の上限3500kgを僅か5kg超過するものであった。原告は刑事手続では嫌疑不十分で不起訴処分を受けている。 【争点】 1. 本件運転が無免許運転として道路交通法64条1項に該当するか(行政処分における無免許運転の故意の要否) 2. 欠格期間を2年間とした本件欠格処分のうち、1年間を超えて指定した部分が裁量権の逸脱・濫用として違法か 【判旨】 争点1について、裁判所は、免許取消処分は道路交通上危険のある運転者を排除して交通の安全を図る行政目的のために行われるものであり、道路交通法64条1項及び103条1項5号の文言上も故意を要件としていないことから、客観的な違反行為が認められれば故意の有無にかかわらず処分が可能であるとして、本件取消処分は適法と判断した。 争点2について、裁判所は、道路交通法施行令の点数制度は行為者の危険性を定型的・画一的に評価するものであるため、個別具体的事情によっては処分が重きに失する場合があり得るとした。その上で、(1)本件車両は法改正前であれば普通自動車に区分され普通免許で運転可能であったこと、(2)車両総重量の超過が僅か5kgであり危険性の度合いは比較的小さいこと、(3)原告は副支所長や先輩従業員から一貫して日産製車両は運転可能と聞かされ、上司の指示で本件車両を運転しており、無免許運転と思い込んだことにやむを得ない面があることを総合考慮し、原告には「運転者としての危険性がより低いと評価すべき特段の事情」があると認定した。したがって、大阪府公安委員会が処分基準に基づく1年間の軽減をせずに欠格期間を2年間としたことは裁量権の逸脱・濫用に当たり違法であるとして、欠格期間を1年間を超えて指定した部分を取り消した(免許取消処分自体の取消請求は棄却)。