生活保護引下げ処分取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 生活保護法に基づく生活扶助を受給していた原告ら(約150名)が、厚生労働大臣による平成25年から平成27年にかけての3回の生活扶助基準の引下げ改定(ゆがみ調整及びデフレ調整による合計約670億円の削減)に基づき、各処分行政庁がした保護変更決定処分の取消しを求めた事案である。原告らは、本件改定が憲法25条の生存権及び生活保護法3条・8条に違反すると主張した。 【争点】 本件生活扶助基準の改定に基づく保護変更決定処分が、憲法25条、生活保護法3条・8条に違反するか否か。具体的には、(1)生活扶助基準の引下げにおける厚生労働大臣の裁量権の範囲、(2)社会保障審議会生活保護基準部会の検討を経ずにデフレ調整及び2分の1処理を行ったことの違法性、(3)ゆがみ調整の手法の合理性、(4)デフレ調整における生活扶助相当CPIの算出方法の適否、(5)激変緩和措置の相当性、(6)原告らの生活実態から生存権侵害が認められるかが争われた。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、生活扶助基準の改定には厚生労働大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの広い裁量権が認められるとした上で、以下のとおり判断した。まず、憲法25条や生活保護法の規定は生活扶助基準の引下げを原則禁止するものではなく、原告らが主張する制度後退禁止原則は採用できないとした。基準部会の検討を経ていない事項について改定を行うことも、法令上社会保障審議会への諮問が義務付けられていない以上、直ちに裁量権の逸脱・濫用とはならないとした。デフレ調整については、平成20年以降の物価下落を生活扶助基準に反映させる判断過程に論理の飛躍や欠落はなく、自民党の政策の影響や財政的考慮が働いたとしても直ちに違法とはいえないと判断した。ゆがみ調整及び2分の1処理についても、検証結果の反映方法は厚生労働大臣に委ねられているとして違法性を否定した。原告らの生活実態についても、最低限度の水準を下回っているとまでは認められないとして、本件改定に裁量権の逸脱・濫用はなく、生活保護法及び憲法に違反しないと結論付けた。