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【事案の概要】 原告(積水化成品工業)は、「架橋アクリル系樹脂粒子及びその製造方法、樹脂組成物並びに包装物品」に関する特許(特許第6313974号)の特許権者である。本件特許について特許異議の申立てがあり、特許庁は、請求項1、4及び8〜10に係る特許を取り消す決定(本件決定)をした。本件決定は、本件発明が引用発明(国際公開第2008/023648号に記載の架橋アクリル系樹脂粒子)に基づき、当業者が容易に発明できたものであるとして進歩性を否定した。原告は、本件決定のうち上記請求項に係る部分の取消しを求めて本訴を提起した。 【争点】 主たる争点は、本件発明と引用発明との各相違点に係る容易想到性の判断の当否である。具体的には、(1)相違点c1(加熱減量1.5%以下との数値限定)の容易想到性、(2)相違点c2(大径粒子の含有量1.0体積%以下との規定)の容易想到性、(3)相違点c3(バインダー樹脂及び溶媒と共に樹脂組成物を構成し塗膜表面に凹凸を形成する構成)の容易想到性が争われた。原告は、これらの発明特定事項が相互に関係する一体的技術思想であり、相乗的効果を奏すると主張した。 【判旨】 知財高裁は、原告の請求を認容し、本件決定のうち請求項1、4及び8〜10に係る部分を取り消した。裁判所は、相違点c2(大径粒子の体積含有量)については実質的な相違点ではないと判断し、相違点c3(塗膜表面の凹凸形成)については引用文献の記載から当業者が容易に想到し得ると判断した。しかし、相違点c1(加熱減量1.5%以下)については、引用文献には樹脂粒子中の揮発分が塗膜表面のムラや耐傷付き性低下を生じさせるという本件発明の課題が現れておらず、この課題を解決するために加熱減量を減ずるという構成の採用が優先日当時の当業者に知られていたとは認められないとして、容易想到性を否定した。結局、本件発明1、4及び8〜10は当業者が容易に発明できたものではないと結論づけた。