訴訟行為の排除を求める申立ての却下決定に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
判決データ
- 事件番号
- 令和2許37
- 事件名
- 訴訟行為の排除を求める申立ての却下決定に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 裁判年月日
- 2021年4月14日
- 裁判種別・結果
- 決定・破棄自判
- 裁判官
- 草野耕一、菅野博之、三浦守
- 原審裁判所
- 知的財産高等裁判所
AI概要
【事案の概要】 本件は、特許権(HIV インテグラーゼ阻害活性を有する多環性カルバモイルピリドン誘導体に関する発明)の侵害を理由とする損害賠償請求訴訟において、相手方ら(原告・特許権者)が、抗告人(被告)の訴訟代理人である阿部弁護士らの訴訟行為の排除を求めた事案である。相手方塩野義製薬に組織内弁護士として所属していたA弁護士は、本件訴訟の提起準備を担当した後に退社し、阿部弁護士らが所属する阿部国際総合法律事務所に入所した。阿部弁護士らはA弁護士の入所後に抗告人の訴訟代理人に就任したため、相手方らは、阿部弁護士らの訴訟行為が弁護士職務基本規程57条(共同事務所における利益相反の規律)に違反するとして、その排除を申し立てた。原々審(東京地裁)は申立てを却下したが、原審(知財高裁)は申立てを認容し、阿部弁護士らの各訴訟行為を排除する決定をした。 【争点】 弁護士職務基本規程57条に違反する訴訟行為について、相手方当事者は、同条違反を理由として裁判所に対しその行為の排除を求めることができるか。 【判旨】 原決定破棄、原々決定に対する抗告棄却(全員一致)。 最高裁は、弁護士法25条1号のように法律により職務を行い得ない事件が規定されている場合には、相手方当事者はその違反を理由に訴訟行為の排除を求めることができるとした従前の判例を前提としつつ、弁護士職務基本規程57条については、日本弁護士連合会が会規として制定したものにすぎず、同条に違反する行為そのものを具体的に禁止する法律の規定は見当たらないとした。そして、民訴法上、弁護士は委任を受けた事件について訴訟代理人として訴訟行為をすることが認められていることを踏まえ、弁護士の訴訟行為が基本規程57条に違反するにとどまる場合には、その違反は懲戒の原因となり得ることは別として、当該訴訟行為の効力に影響を及ぼすものではないと判示した。したがって、基本規程57条違反を理由として訴訟行為の排除を求めることはできないとして、原決定を破棄し、申立てを却下した原々決定を是認した。なお、草野耕一裁判官は補足意見において、本決定は阿部弁護士らの行動が弁護士として適切であったという判断を含意するものではないとし、共同事務所における利益相反の規律を具体的なルールで明確化することは日弁連の喫緊の課題であると指摘した。