AI概要
【事案の概要】 原告(株式会社島津製作所)は、「X線透視撮影装置」に関する発明について特許出願をしたが、拒絶査定を受けたため、拒絶査定不服審判を請求した。特許庁は、本願発明は引用文献1(特開2006-122448号)に記載された引用発明及び引用文献2(特開2009-022602号)に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとして、審判請求は成り立たないとする審決をした。本願発明は、X線管、X線検出部、これらを支持するアーム、本体に配設された表示部、及び別体のモニタ台車に備えた第2表示部を有するX線透視撮影装置において、手術中に本体側の表示部に表示されるX線画像のみを回転させる画像回転機構を備える点に特徴がある。引用発明との相違点は、この画像回転機構の有無であった。原告は、本件審決における容易想到性の判断に誤りがあるとして、審決の取消しを求めた。 【争点】 本願発明と引用発明との相違点(本体側の表示部に表示されるX線画像のみを回転させる画像回転機構を備える点)について、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たといえるか。具体的には、(1)引用発明において、操作者が被検者を見る方向と操作用ディスプレイに表示される患部画像の方向とが一致しないという課題(課題B2)を当業者が認識し得るか、(2)引用文献2から抽出された技術事項2(X線画像を見る者の位置情報に基づく画像回転処理)を引用発明に適用する動機づけがあるか、が争われた。 【判旨】 裁判所は、審決を取り消した。まず、引用発明は、X線被爆を避けるためX線曝射しない状態で操作者の手元にコリメータやカメラの操作画像を表示するX線映像装置を提供することを目的とするものであり、引用文献1には、操作者の視認方向と術者の被検者に対する視認方向が一致しないという課題(課題B2)についての記載も示唆も一切ないとした。被告が提出した乙3・乙4の文献についても、術者と助手又は術者同士がそれぞれ異なるモニタを見る場合の課題を指摘するにとどまり、術者とは異なる操作者に関してそのような課題を示唆するものではないとして、当業者が課題B2を当然に把握するとはいえないと判断した。さらに、引用文献2に記載された技術事項についても、HMDを装着し操作者を兼ねた術者の床面上の位置情報に基づく画像回転処理であり、審決がその構成を捨象して技術事項を不当に抽象化・拡大化したものであるとし、引用発明の具体的構成とは大きく異なるため適用の動機づけがあるとはいえないと判断した。以上から、本願発明は引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たとはいえず、これと異なる審決の判断は誤りであると結論づけた。