自衛隊出動差止等,損害賠償請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 令和2行コ30
- 事件名
- 自衛隊出動差止等,損害賠償請求控訴事件
- 裁判所
- 大阪高等裁判所
- 裁判年月日
- 2021年4月16日
- 裁判種別・結果
- 棄却
- 裁判官
- 山田陽三、池町知佐子、山田陽三
- 原審裁判所
- 大阪地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 平成26年7月の閣議決定(集団的自衛権の行使容認等)及びこれに基づく安全保障関連2法(平和安全法制整備法・国際平和支援法)の制定が憲法9条に違反するとして、市民462名が国を相手に提起した訴訟の控訴審である。控訴人らは、(1)自衛隊法76条1項2号に基づく存立危機事態における防衛出動命令(2号出動命令)、(2)重要影響事態法に基づく後方支援活動としての物品提供等、(3)国際平和支援法に基づく協力支援活動としての物品提供等、(4)PKO協力法に基づく駆け付け警護業務命令の各差止めを求めるとともに、上記閣議決定及び立法行為により平和的生存権、人格権及び憲法改正決定権が侵害されたとして、国家賠償法1条1項に基づき各1万円の慰謝料を請求した。原審(大阪地裁)は差止請求に係る訴えを却下し、国家賠償請求を棄却したため、控訴人らが控訴した。 【争点】 (1) 2号出動命令等の各行為が行政事件訴訟法上の差止訴訟の対象となる「行政処分」に該当するか(訴えの適法性)、(2) 平和的生存権が具体的権利として裁判規範性を有するか、(3) 閣議決定及び立法行為による人格権侵害(生命・身体への危険に対する不安・精神的苦痛)の有無、(4) 憲法改正決定権の侵害の有無、(5) 裁判所が関連2法の憲法適合性について積極的に判断すべきか。 【判旨】 控訴棄却。裁判所は、差止請求の対象となる各行為について、2号出動命令は上級行政機関から下級行政機関への内部的命令であり、後方支援活動・協力支援活動としての物品提供等も国民の権利義務を直接形成するものではないとして、いずれも行政処分に該当しないと判断し、差止訴訟を不適法とした。国家賠償請求については、まず平和的生存権に関し、憲法前文の「平和のうちに生存する権利」は憲法の基本理念を示すものにとどまり、その内容は抽象的かつ多義的であって、具体的権利(裁判規範性のある権利)として保障されているとは解し難いとした。人格権侵害については、関連2法の成立後、存立危機事態における2号出動命令等が実際に発せられた事実はなく、生命・身体等が現に侵害された事実も侵害の具体的蓋然性も認められないとした。控訴人らの不安・精神的苦痛については、特に戦争体験者等がその体験を背景に精神的苦痛を受けたこと自体は否定しないものの、特定の立法がされたことに伴い一般に広く生じ得る抽象的な不安感にとどまり、法律上保護された権利利益の侵害には当たらないと判断した。また、憲法適合性の判断について、裁判所の違憲審査権は具体的争訟事件を前提として行使されるべきものであり、差止訴訟が不適法で国賠請求も理由がない以上、関連2法の憲法適合性を判断する必要はないとして、控訴人らの憲法判断を求める主張を退けた。